4章 2話
それから数日。
いよいよ、その時がきた。
僕は自室で、パソコンを前に胸をバクバクさせてる。
「じゃあ……グループ限定公開を外して、SNSに告知するよ? いい?」
『うん、大丈夫! 楽しんでもらえる! 多分、きっと、おそらく……。うん!』
大手動画投稿サイトに投稿していたボイスドラマ動画の公開を――一般公開にする。
そうしてSNSに、動画へのリンクつきで告知を書き込む。
「ああ、どうなるんだろう! 波希マグロさんの声は最高で耳が幸せだったけど! 僕の台本やらイラストやら、動画編集が足を引っ張ってたら!」
『大丈夫だよ! 七草兎さんの書いた台本、イラスト、動画、全部私は繊細で大好きだったから! きっと観てくれる皆も、楽しんでくれるって!』
「うう……。ありがとう。君の声依頼用のHP、ちゃんと動いてる?」
『うん、動いてるよ! サンプルボイスとかも流れる! 依頼はまだ一件もないけど、こっからスタートだね!』
それは、まだ依頼がなくても当然だろう。
だって、どこにも宣伝をしてないんだからさ。
このボイスドラマ動画の動画情報欄で宣伝した後、声劇アプリにもリンクを貼るらしいけど……。
声劇アプリは、主に演じ手側の集いだからなぁ……。
台本主さんは、色んな人に演じてほしいだろうし。
僕のSNSアカウントのフォロワーは、イラストを見るのが好きな人とか、同人サークル関連の人がそこそこの人数いる。
フォロワー数だって、春に比べたら段違いに増えた。
彼女のアドバイスで夜に投稿したり、投稿時間を散らばせたのが良かったんだと思う。
『――あ! 更新押したら、再生回数が増えてる!』
「え!? 本当!? どうしよう、リンク踏んだだけで、すぐに戻ってたら……。もう!」
『今日はマイナス思考だね~。大丈夫、成功したら二人の力。最後まで見ないで帰っちゃったら、冒頭セリフで心を掴めなかった私のせい!』
「いやいや! それを言うなら成功したら二人のお陰! 視ずに帰っちゃったら、トップ画から魅力的じゃない僕のせい!」
お互い、興奮してるのかな?
なんか変なやり取りをしてる気がする。
『あれ、グッドボタン? これ、いいよってことだよね!?』
「え? あ、本当だ! リアクションがきた!」
『成功ってこと? そういうことかな!?』
「た、多分? コメントとか視聴回数の伸びとか、まだ分からないけど……。少なくとも、誰かがちゃんと観てくれてるんだと思う」
更新を押す度に、視聴回数が増えていく。
スマホでSNSも更新すると、いいねやコメントがついてる。『おめでとうございます』、『視にいきます』、『イラスト可愛い』など……。
そこそこフォロワー数が増えてた下地は、ボイスドラマへ流れる導線として力になったみたいだ。
伸び悩んでても、諦めずにイラストを描き続けてよかった……。
『こ、これは……。凄いね! あっという間に百再生を超えたのって、SNSでした告知のお陰だよね!? やっぱり、ずっと努力してきた七草兎さんのお陰だったね!』
「そ、そんなことは……。内容が、特にボイスドラマ動画なんだから。ボイスの……僕と声とは不釣り合いなまでに君の演技が魅力的だからだよ! ある意味、引き立て役になれてよかった!」
『もう、自分を卑下しないの! 気持ちが伝わってくる演技だって言ってるのに~。このボイスドラマ動画を出せたのは間違いなく、七草兎さんがいたからなんだよ?』
「そ、それを言うなら……。波希マグロさんと出会わなければ、何も始まらなかったよ」
なんだこの会話、とは思うけど……。
お互いのよかったところを褒め合いながら、ボイスドラマの反応を見つめる。
そうして、一つ形にできた喜びと彼女の嬉しそうな声に包まれたまま、眠りに落ちた――。
迎えた土曜日。
僕は、また八王子にある彼女の家まで来た。
―――――――――――
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!
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