1章 21話
翌朝。
アルバイトに行く前に母さんと朝食を作る。
休日ぐらい手伝いをしないと、借金も増額させられるからなぁ。
「……あんた、その顔どうしたの?」
「ん? 何が?」
「何がじゃないわよ。ニヤニヤしてて、気持ち悪い」
「酷い」
母さんから指摘されるぐらい、僕はニヤついてるのかな?
そうかもしれないな。こんな日がくるなんて思ってなかったから。
大好きで仕方ないと思える人が彼女になってくれる日がくるなんてさ。惨めでも踏ん張ろうと思って生きてた少し前からは考えられない。
食事ができる頃になって、父さんがゴミ捨てと庭掃除から戻ってきた。
家族全員が揃ったし、テーブルにお皿を運ぶか。
そうして全員が席について、食事を食べ始める。
いつ切り出そうかと悩む。
説明するとしても、どう説明するか。
どう反応されるか怖い。
でも――根性と行動力だ。
「あのさ、僕に彼女ができたって言ったら……驚く?」
両親の箸が、ピタリと止まった。そうして真剣な瞳で僕を見据えてくる。
うわ……。紹介しなさいとか言われるのかな。
ドラマや映画とかだと、そんな感じだもんな。
「晴翔、どこの詐欺師だ?」
「あんた、人の良さにつけ込まれてるのよ。騙しやすそうだもの。今、いくら請求されてるの?」
「親からの信用が無さすぎて悲しいよ、僕は」
もうちょっと、他に言うことがあるでしょ?
二人して、いきなり詐欺を疑うとか……。
いや、今まで散々人に利用されてきた僕を知ってるからな。
心配してくれてるってことだ。多分、きっと……。
「その、実は……。紹介は、できないんだ」
「やはり詐欺か」
「警察に連絡しましょう。実害はどれぐらいでたの?」
「違うわ。ネットで知り合った一個下の、普通の子だわ」
あ、やばい。
あまりに二人が疑うから、思わずネットで知り合ったとか言っちゃった。
「ふむ。ならば開示請求からか」
「訴えるにしても、証拠と予算がいるわね」
「違うから! 気にするところは、そこじゃないでしょ!?」
「ネットからの恋愛詐欺なんて、常套手段じゃないか」
それは――知らないけど!
いや、確かにそういうニュースはよく見るけどさ!
だから僕も言いにくかったのに!
「一度は断られそうなのを僕が付き合ってくれって言ったの! 僕が騙されてる側じゃない! 彼女が騙され――……。騙してないけどさ!」
「晴翔から? そういう感情になるよう仕向けられたのか?」
「あんた、チョロいものね。人のために尽くすとか、程々にしないからこうなるのよ。いつも言ってるでしょう。あんたのやりたいことを、全力でやりなさいって」
「いや、だから! 違くて!」
結局僕は、彼女とネットで出会い、どういう関係を経て付き合ったかを一から説明する羽目になった。
朝から両親に、初恋の全てを告白とか……。
罰ゲームにしても、キツすぎるよ。
僕が自爆したからなんだけどさぁ……。
波希マグロさんを詐欺師呼ばわりされたら、こうもなるよ――。
―――――――――――
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