1章 18話
今、僕は波希マグロさんに好きって言っちゃった!?
ネットで知り合った関係だからって、ずっと感情に蓋をしてたのに!
ゆ、油断した!
「いや、あの! ごめん! 眠くて、つい本音が!」
『ほ、本音……。え、え!? つ、つまり、それって私のことを? え!?』
彼女は明らかに混乱してる。
音声越しに聞こえる言葉が、もう言葉になってない。
何かを落としたような、物音も響いてくる。
「い、いや、その! あの、これは……」
どうしよう、どうしよう!
ここで「違う、勘違いだよ」って言ったら、彼女に魅力がないみたいになる。
そもそも、勘違いでも何でもない。
これが一番の問題だ。
どう言うのが正解なんだろう!?
迂闊な発言をした自分を殴りたい!
ネットで繋がった関係。顔も名前も、お互いの氏素性も分からない。
それなのに、こんな気持ちを抱くなんて……。やっぱり僕は、おかしいのかもしれない。
だけど――。
「変だよね。ネットで会った人にこんなこと言われるなんて……。気持ち悪い、よね?」
『き、気持ち悪くない。……変わってるのかもしれないけど、七草兎さんが気持ち悪いなんて思えないよ』
本当、なのかな?
内心、嫌がられてたら……どうしよう。
迷惑と思われてたら……。
いや、でも。
寝落ち通話までしてくれて、二ヶ月以上も毎日のように連絡を取り合う仲で……。
もしかしたら、脈はあるのか?
恋なんて初めてで、しかもネットで知り合った関係とか……。
もう、正解が分からない。
でも、ここまで来たら後戻りなんて――できない。
僕は根性と行動力だけが取り柄だろう。彼女が迷惑じゃないなら……勇気を振り絞れ!
「す、好きなんだ」
『…………』
「初めて会った時は、憧れの存在にどきどきしてるだけだと思った。でも、誰も認めてくれなかった僕を認めて、庇ってくれて……。惨めでも足掻く絶望に近い日々から、僕を救ってくれた。波希マグロさんは、僕に希望をくれた! ネットで出会った人にこんな感情を抱くなんて、よくない。友達になってくれた波希マグロさんへの裏切りになるかもって、ずっと感情に蓋をしてたけど、本当は大好きなんだ! 君がいない生活なんて、もう考えられない!」
一度、蓋をしてた感情をさらけ出すと決めたら、一気に溢れ出てきた。
抑えられずに早口で捲し立てちゃったけど、聞き取れたかな。引かれてないかな。
ああ、こんなにも必死に訴えかけるぐらい、僕は波希マグロさんのことが好きなんだな……。
本名すら知らない彼女のことが、僕は大好きだ。
「だ、だから……。付き合いたいとすら思ってる! 君の幸せそうな声を、ずっと聞いてたい! 気持ち悪いと思われても仕方ないけど、それが僕の本音なんだ!」
よくないクセがでた。
人から話すと時々、暑苦しいと言われるのは……こういうところだよな。
もう、スマホを持つ手が震えすぎて止まらない。指先まで脈打って感じる。
暗い部屋の中、スマホの明かりだけ灯ってるのが……凄く不安だ。
七草兎さんの声が返ってこない時間が、信じられないほど長く感じる。
無言の時間。
僕の心臓の音、マイクが拾ってないかな。
嫌われて、この関係が終わったら……。
彼女を傷つけたら、僕は自分が大嫌いになる!
『――……ぅ』
ほんの僅かに聞こえた声は――鼻を啜り、声を押し殺して泣いてるような音だった。
ああ……。
僕は、やってしまった。
―――――――――――
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!
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