1章 5話
「もも、もしかして! あのコラボ動画への返事!? うわ、どうしよ! 下手な演技で汚しやがってとか、怒ってるのかも!?」
声が上擦り、手が震える。
それだけ、有名人からのコメントなんて衝撃的なものなんだ。
ましてや、憧れの波希マグロさんからだなんて!
震える指先でディスプレイをタップして、コメントを開くと――。
「……『コラボありがとうございます。元気な声で私まで前向きになる素敵な演技でした』。……って、ええ!? あの動画を聞いてくれた!? もしかして、褒めてもらえた!?」
ど、どうしよう。もの凄く嬉しい。
思わずスクショを撮っちゃった! というか、コメントを返すべきかな!?
挨拶をしたから、義理として返事をしてくれただけかもしれない。
ババっと波希マグロさんにコラボをした他の人へのコメントを見ると、色んな人に『ありがとうございました』と言ってる。
やっぱり自分だけじゃないんだなって若干残念に思うけど、少し褒めるニュアンスが他と違う部分を見つけては嬉しさを覚える。我ながら器が小さいけど、これは仕方ない!
他の人の声劇動画にも分析したコメントを残しているし、何度かコメントのやり取りをしてるのもある。
それなら――僕も、返信コメントをしていいのか?
「何を書こう……」
迷いながらも、返事をくれたお礼などを改めて書き、コメントをする。
すると、すぐにコメントが返ってきた。
興奮と同時に、思う。
もしかしたら、波希マグロさんも学生なのかな?
この時間帯、社会人はまだ仕事中だろうから。
もし、お時間があるならば――一緒に生声劇をしたい。
いや、あまりに実力差がありすぎて……迷惑だろうな。
そうは思うんだけど……。個別レッスンをしてくれてる声優スクールの先生から「何ごとも挑戦。怯えてたら始まらない」と教えられた言葉が頭に浮かぶ。
「……挑戦を、しなくちゃ。現状に満足してないなら、なおさら……」
竦む自分に言い聞かせつつ『僕の実力不足は百も承知ですけど、ご迷惑でなければ、今から一緒に生声劇をしませんか? 台本は波希マグロさんにお任せ致しますので!』と、コメントを書く。
震えが増して止まらない指に、根性を出せと言い聞かせ――送信。
胸の鼓動が、バクバクとして息が苦しい……。
こんなんじゃ万が一波希マグロさんが受けてくれたときに、今あるベストが出せない!
やることをやって、返事を待とう!
「い、射手座だぞ獅子座だぞアンドロメダ座だぞ。武具馬具武具馬具三武具馬具――……」
発音や滑舌練習をして、もし生声劇をする流れになったとき、セリフを噛まないようにとそなえる。
スクールで習い、最早暗記するほどに練習している外郎売りを読み始めたときだった。
へ、返事が来た!
飛びつくようにスマホを見ると『それでは、この台本はどうでしょうか? 一五分ぐらいの短めの台本ですが』。そう返事が来ている。
一緒に……今から生声劇をしてくれる?
あの、プロかと思う程に凄い演技をする波希マグロさんが!?
―――――――――――
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!
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