第11話 遺跡の試練
探査艇のモニターに新たなメッセージが浮かび上がる。その文字は翻訳プログラムによって解析され、探査チームの全員の目に飛び込んできた。
「『選べ。共存の未来か、滅びの道か。』」
その言葉に船内の空気が凍りついた。
村上が緊張した声で言った。
「選べって……具体的にどうしろっていうんだ?」
高橋が深刻な表情でモニターを見つめる。
「遺跡は、ただ言葉を投げかけているわけじゃない。何か行動を求めているはずだ。」
アヤは球体の輝きを見つめながら、何かを思案しているようだった。
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その時、遺跡全体が低く唸るような音を発した。その音が球体から広がり、探査艇の通信装置を通じて船内に響き渡る。音は次第に複雑なリズムを持ち、まるで意思を持つ者の声のように感じられた。
「これ……歌みたいに聞こえる。」
アヤが静かに呟いた。
「遺跡が、音を通じて試練を与えようとしているのかもしれない。」
村上が装置を操作しながら補足する。
「音波のデータを解析してみます。でも、これまでのデータと違う……複数の音波が重なっている。」
その時、球体の輝きがさらに強くなり、探査艇の窓越しに人魚たちの姿が浮かび上がった。カイとセイラを中心に、数匹の人魚が静かに遺跡の中央へと移動している。その動きには緊張と決意が感じられた。
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カイは低い音を響かせながら球体に近づいた。その音に反応するように、球体が新たな輝きを放ち、遺跡全体が振動を伴う光で満たされた。
「遺跡が……応えている。」
カイが呟く。その隣でセイラが目を細め、静かに首を振る。
「これは試練だ。遺跡が我々に未来を選ばせるための。」
カイはその言葉を静かに受け止めながら、探査艇の窓越しにアヤと目が合った。彼の瞳には問いかけるような光が宿っている。
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アヤはその視線に応えるように、小さく頷いた。彼女の中で、遺跡が求めている答えが徐々に明確になりつつあった。
「遺跡が求めているのは、私たちと人魚が共にこの試練を乗り越えること……それしかない。」
彼女はコントロールパネルを操作し、船内の音響装置を起動した。そして、祖父の歌を元にした旋律を奏で始めた。その音が遺跡のリズムと重なり合い、空間に新たな響きを生み出す。
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その瞬間、遺跡が再び映像を映し出した。地球の海と陸、そして空が描かれる映像の中で、二つの種族が手を取り合い、環境を回復させていく未来が浮かび上がる。しかし、同時に対立し、滅びに向かう未来の可能性も描かれている。
「これが遺跡の言いたいことか……。」
高橋が静かに呟いた。
「我々が未来をどう選ぶかが、全てを決める……。」
カイは遺跡の光を浴びながら、静かにアヤに近づいていった。そして低い音を響かせる。それは「協力しよう」という意味を含んでいた。
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遺跡の光が次第に変化し始めた。その輝きが人間と人魚を包み込み、二つの種族が試練にどう向き合うかを問うようだった。
アヤが静かに言った。
「共存の未来を選びたい。だけど、それは私たちだけじゃ実現できない。あなたたちの力が必要です。」
その言葉に、カイは小さく頷いた。そして、球体に向かって低い音を響かせた。
その音に応えるように、遺跡の光がゆっくりと収束し、新たな道を示すように輝き始めた。その先には、遺跡の真実が待っていると誰もが感じていた。
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