第3話 漢検準1級1回目

 漢検2級合格後は漢検の勉強は考えていませんでした。周りの意見を聞いても、準1級以上は日常使うことが無いので必要ないという意見が多かったからです。しかし、漢検2級の評価はあまり高くありません。漢検2級を取得していると言っても「ああそう」くらいの反応です。でも、漢検準1級を取得していると言うと「すごい、漢字得意なんですね」と言われるのです。しだいに私も漢検準1級ブランドに心が傾いていきました。そこでまず、以前購入しておいた漢検協会出版の「漢検分野別精選演習準1級(以下分野別問題集準1級と略します)」を解いてみました。ところが解いてみてびっくり、解ける問題がない。読めない、書けない、意味が分からない。勉強しても受からないとその時思いました。それでも何度か覚えようと試みてみました。が、なかなかはかどりません。はかどらない大きな要因は熟語の意味が分からないことだと思いました。熟語の意味が分からないと覚えにくいし、覚えてもむなしいだけで覚えた気になりません。そこで、エクセルを使って漢字・読み・意味を書き込んでいきました。しかし、時間がかかるし面倒くさいし1ページで挫折してしまいます。その後何度か試みましたがやはりすぐに挫折してしまいました。そして断念しようという心境におちいっていったのです。


 本格的に漢検準1級の勉強を始めたのは、漢検2級受験日から約4ヶ月後のことです。書店に立ち寄って漢検陳列棚で漢検問題集を眺めていました。その時手に取ったのが旺文社からでている「漢検ポケットでる順準1級(以下漢検ポケット準1級と略します)」です。


 この問題集は頻出漢字がランク別にコンパクトにまとまっていて、全ての熟語の意味が載っています。すぐに購入して勉強を始めました。ところがやはり準1級の漢字は難問でなかなか覚えられずため息ばかりついていました。そこでとりあえず読みと書き取りのAランクだけを覚えてみようと試みました。すると意外にもすんなりと頭に入っていったのです。「もしかしていけるのではないか」とその時思いました。その後、読みと書き取りのBランクCランクを覚えていき、さらに他の設問も覚えて、2ヶ月かけて漢検ポケット準1級をおおかた覚えることが出来ました。


 さて、漢検受験日の2ヶ月前になりました。漢検ポケット準1級ではボリュウムが少ないので、まだ合格レベルに達することが出来ません。合格するためには他の問題集を勉強しなければならないわけです。そこで私が選んだのが、受験者の間で絶対的に支持されているナツメ社出版の「史上最強の漢検マスター準1級(以下漢検マスター準1級と略します)」です。この問題集も頻出漢字がランク別に載っていて熟語の意味も載っています。


 漢検マスター準1級で勉強を始めたのですが、この問題集はなぜか書き取り、誤字訂正、対義語・類義語の意味が載っていません。初めて分野別問題集準1級を見た時の衝撃が頭をよぎってしまったわけです。それに、問題数が多くてあと2ヶ月で覚える自信もありませんでした。


 私が次に選んだ問題集が旺文社からでている「分野別漢検でる順問題集準1級(以下漢検でる順準1級と略します)」です。この問題集は全ての熟語の意味が載っていて頻出漢字もランク別に載っています。問題数も今の自分に適切であると感じました。とりわけこの問題集に決めた理由は、漢検ユーチューバーAさんがこの問題集をやりこんで合格したことでした。


 ここで漢検準1級について少し触れようと思います。漢検準1級の出題内容は、読み、表外の読み、熟語と一字訓いちじくん(読み)、共通の漢字(書き)、書き取り、誤字訂正(書き)、四字熟語(読み・書き)、対義語・類義語(書き)、故事こじことわざ(書き)、文章題(読み・書き)です。合格点は160点(8割)。2級までと異なる点は読みと書きのみの問題と言うことです。配点は異なるものの読みが65題、書きが65題となっています。したがって、読みと書きに分けて覚えれば効率的に学習することが出来ます。私は読みについては電車のなか等で、書きについては机上きじょうで覚えました。学習方法は2級の時と同様に出来なかった問題に✕△をつけて、さらにどうしても覚えられない問題に●をつけて重点的に覚えていきました。以下、特に気になった設問について述べます。


 ・熟語と一字訓―熟語の読みとその語義にふさわしい訓読みを問う問題です。初めは覚えにくいと思われますが、組み合わせの漢字は意味が類似しているので、類似している意味を意識すれば覚えやすく得点源になるものです(例―永訣えいけつわかれる、厭悪えんおにくむ、磨礪まれいみがく)。


 ・共通の漢字―二つの熟語の共通する漢字一字の書きを問う問題です。初出しょしゅつが多く対策がしにくいため漢検準1級最大の難点です。解答を覚えるというよりも、問題を多く解くことによって漢字を導き出す感覚を養うように心掛けました。


 ・誤字訂正―2級同様に他の書き問題を覚えれば解けるようになるので、一通り学習してから問題を解くようにしました。


 ・四字熟語―準1級の四字熟語はとにかく難読漢字が多いです。意味や由来をおさえることも重要ですが、そもそも読めなければ書くことも出来ないので、まず問題集の四字熟語が読めるようにしました。


 漢検ポケット準1級と漢検でる順準1級をほぼ正答できるようになったのは、受験日の3週間前です。合否はともかく漢検準1級レベルに達したと自分では思っていました。ところが、書店で過去問を見た時7割も解けないと思って焦りました。そして漢検協会出版の「過去問題集準1級」を購入して時間を計りながら解いてみました。結果は平均点が200満点中136点。合格点が160点であるためまったく勉強不足なわけです。


 漢検ユーチューバーおすすめの問題集で勉強したのに合格レベルにも達していない。その理由は漢検準1級の難化にありました。ここ数年の間、漢検準1級が難化してしまったわけです。


 受験日まであと3週間しかありません。今から漢検マスター準1級を解いても間に合わないと思った私は、予想問題を解くことを思いつきました。書店に行って予想問題集を探したところ販売していたのが成美堂出版の「本試験型漢字検定試験問題集準1級(以下本試験型漢検準1級と略します)」です。この問題集を1回解いて、出来なかった問題だけを橙色だいだいいろペンで答えを書きこんで暗記シートで覚えました。すべて覚えることは出来ませんでしたが、受験日まで7割ほど覚えて試験に臨みました。


 受験日当日、試験会場の場所についてよく確認していなかった私は道に迷ってしまい、会場に着いたのが試験開始10分前でした。受験者は中高年者が多くて学生らしき者はひとりもいませんでした。さて、なんとか落ち着きを取り戻して回答しましたが、感覚的には7割も出来ていないという印象でした。


 1ヶ月半後、漢検協会から小さい封筒が届きました。落ちていることは分かっていましたが問題は点数です。結果は120点。6割しか出来なかったことで改めて漢検準1級の難しさを実感しました。

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