その4
放課後、僕はひとりで帰路に付いた。
いつ辞めよう。退学届を提出してから親に報告しよう。
ふふふと僕は独りでほくそ笑んだ。
お昼休み中にキャンパスの総務課でもらった退学届を、すべて書き終えていた。
学校の校門をくぐりながら、手にしているその退学届の紙に目を落とす。空白になっている欄が一つ存在していた。ここに親のサインが必要らしい。この部分どうしよう。反対の手で書いたら行けるか。こんなところだけ自由がないらしい。自由を謳っているのに、本当にがっかりしてしまう。親の意向がないと退学も出来ないのか、この学校は。いずれにせよ、この程度の問題はくぐり抜けてやる。方法はいくらでもあるのだ。最近流行りのAIチャットボットに聞けばいい。解決方法を提示してくれるはずだ。ふふふとまた笑みをこぼした。
逆に、笑えてくる。人は絶望を下方向に突き破ると笑えるのだ。
たった半年の僕の高校生活。長いようで短いようで、楽しくなりそうな予感だけが先行した空虚な時間だった。夢とか希望とか叶えられたら素晴らしいのにね。ほとんどの人は叶わないのが現実だ。
それを教えてくれてありがとう。
そして、さよなら僕の高校生活。
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