第一章 通信制高校なら良くあること
その1
「オーマイガッ!」
僕は絶望していた。
友達のいない二学期に。
どうしてこうなったのだろう。夏休みまではいたのに。
三人も友達がいたのに。
みな夏休み中に、僕の元を去ってしまった。
薄情すぎるにも程があるだろう。
一人目は宮繁。引きこもりのネット廃人属性の友達だった。
最初からそういう気配は薄々感じていた。
宮繁とは、夏休みの第一週目で連絡が途絶えた。
「なあ、宮繁。最近どうしたん? 遊ぼうよ」
「なんか疲れた」
「疲れた? なにに?」
「人間関係」
「深いなー、闇が。闇が深い。やみふか」
そのやり取りを最後に、既読がつかなくなった。
通信制高校では良くある事らしい。
二人目は花崎。一番意識の高い男。
自由な校風に憧れてこのM高等学校に入学したと話していた。
夏休みの第二週目に話を切り出された。
「俺、真面目に大学、考えてるんだ」
「へぇー、受験組だね」
「だから全日制の高校に入り直すわ。進学校」
「お?」
「じゃあな、鳥羽。勉強忙しいから、これっきりだ」
そのやり取りを最後に、既読がつかなくなった。
これも通信制高校なら良くある事らしい。
そして三人目は高木君。帰国子女で英語が堪能なやさ男。
僕らのグループの中でも一番、雰囲気の良さそうなモテ
夏休みの第三週目に入ったタイミングで、こう打ち明けられた。
「僕ね来週、引っ越すんだ。九州に」
「ここ東京だけど?」
「うん。九州のキャンパスに通うことにする」
「僕は一人になるわけだけど?」
「オンラインでまたゲームしようよ」
そう言って夏休みの最終日に九州へ旅立ってしまった。
M高等学校は全国八か所にキャンパスがあるから、一応は同じ学校の生徒ではある。
学内チャットとして使われているSlackでやり取りもできる。
が、リアルで会う機会はなくなるだろう。
リア友とネッ友は性質が全く違うのだ。
分かれ。この気持ち。
これもやはり通信制高校なら良くある事らしい。
よくある事……なのか?
いや、たぶんない気がする。
たぶんじゃなくて、絶対ない気がしてくる。
友だちが三人いなくなるとか、普通ないよね。
僕くらいじゃない?
僕がなにしたって言うんだろう。
ほぼ不可抗力みたいに友だち消えて行ったけど。
これじゃまるでデスゲームだ。
この学校ってもしかして、そういう系?
友だち減って行くデスゲーム的な学校だった?
そういうのは入学案内に書いといてよ。
せっかく長野から上京してきて東京にあるキャンパスに通えるようになったって言うのに。
自由な校風とか、好きなことを好きなだけ学べる環境とか、社会で生き抜く力が身につくとか、そんな謳い文句が目に止まったから、僕はこの高校に入学することにしたんだ。
簿記部もあるって聞いたから、一学期は勉強だって真面目に取り組んだよ。
必要な学校の単位も大半は取ったし、簿記三級だって受かった。
友達もできて、あとは恋愛もできたら言うことなしだなと思って夏休みに突入したら、二学期からまた独りに戻ってた。
呪いか?
友達がいないなら、この後の高校生活だって、充実させようがないじゃん。
二学期から友達を作るハードルは高すぎるし、僕には無理だよ。
今日から独りで登校だよ、ちくしょう。
「オーマイガッ!」
かくして僕は絶望したのだ。
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