壁の手
Sさんは昼休みに友達と体育館の横でバレーボールで遊んでいた。円陣を組んでボールを打ち合ううちに、友達が強く打ち上げたボールがSさんを飛び越えて後方の地面に落ちた。地面のデコボコの具合のせいかボールは横に大きく弾んで、体育館の裏へと飛んでいってしまった。
ボールを追いかけて体育館の角を曲がったSさんは、その場で立ち止まった。
体育館のコンクリートの壁から白くて細い腕が出ていた。
呆然とするSさんの目の前で、腕は何かを手探りで探す時のように空中を掻き、地面に転がっていたバレーボールを掴むと、するりと壁の中に吸い込まれるように消えていった。
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