第2話 プロローグ2
「そういや小さい頃によく遊んだな。この公園まだあったのかよ」
待ち合わせ先は家から徒歩数分の小さな公園だった。裏通りに入ったところにあり、昼間はともかく夜間の人通りはほとんどない。
手入れがおざなりになった樹木が鬱蒼と茂り公園内は通りからも死角となっている。そんな公園に待ち合わせの相手は既に来ているようだ。
俺も慌てて目出し帽を被り不審者の仲間入りをする。
「えーと、こんばんは? バイトの紹介で来たんですけど合ってますかね?」
四人の先客も同じように色とりどりの目出し帽を被って顔を隠してはいるが装備は明らかに熟練の
もし違っていたら速攻で逃げなくてはならないので恐る恐る後ろを気にしつつ声をかけた。
「おう、バイト募集したのはワイらで合ってるで。まあ、どっからどう見ても不審者だけどな」
ガハハと豪快に笑ったおっちゃんらしき人はブラックと名乗った。
他はブルーにグリーンにブラウンだ。
「バイト代は先に支払ってあると思いますが大丈夫ですか?」
「あ、はい、貰ってます。えーと、レッドです、今日はよろしくおねがいします」
「いやぁ、このバイトはなかなか受けてくれる人がいなくて困ってたんですよ。ダンジョンに入るから危ないことがないとは言い切れないんだけど、ダンジョンのランクに対して僕らのランクは十分に高いから安心して良いよ」
几帳面そうな口調のブルーさんに人懐っこそうなグリーンさん、そして、寡黙なブラウンさんだ。
パーティとしてのランクはC。探索者ランクとしては中堅、ベテランに含まれる。リーダーであるブラックさんはBランクであり、上位探索者と言われるランクらしい。
「よしっ、開いた。先に降りるから順番に続いてくれ」
ダンジョンの入口は公園のトイレの裏のマンホールだった。
迷宮は既存の施設等を取り込む形で異界化してできる。大きく環境が変わるものもあるが、この入口のように一見ダンジョンと気づかないような場合もあるのだ。
ブラックさんグリーンさんと続き、俺の後にブルーさんがマンホールの蓋を閉めながら降りる。
蓋を閉めても薄明るいのは迷宮化しているからだろうか。
「コアルームまでに出てくるのは最下級のスライムだけだ。折角なのでレッド君も戦ってみるかい?」
グリーンさんのマジックバッグから取り出した剣を受け取る。
「あ、それは是非戦ってみたいです。俺、
「
「ええ、『
アイテムボックス系スキルは異空間にアイテムをしまうことのできるスキルだ。種類によって入れられるアイテムの数や大きさ、種類が異なる便利なスキルではあるが他のスキル同様、魔力のある迷宮の中でしか使用することができない。
つまり、迷宮を出入りする際にはアイテムを詰め替える必要があるのだ。それに対し、誰でも使用でき、魔石を必要とするものの迷宮外で使用できるマジックバッグが存在する。
そんなわけでチートスキルの代表にもなりうるアイテムボックスもさほど価値が高いスキルではなくなっている。
ついでに言えば
「商人系の役職は探索者以外では結構人気なんだがな。ワイのような探索者しかできんやつよりは潰しが効くじゃろ」
「いや、ブラックが脳筋すぎるだけでしょ。とはいえ、商人系は探索者以外で人気なのは確かですよ。私達がお世話になってる税理士も商人系の
のんびりと話しつつも時折ぽよぽよと現れるスライムを倒させてもらいながらコアルームへの道を辿る。
階層を降りてからはスライム以外も出てはくるが、さすがのCランクで鼻歌交じりに排除している。
「あのー、それで聞いていいかわからないんですけど、実際のところダンジョンコアの破壊ってどうなんですか?」
そもそも、このバイトがなかなかの良い値で成り立っていることからコア破壊によるパーティ崩壊とかの都市伝説にも真実が含まれているとは思うのだが、やはり気にはなるので思い切って聞いてみた。
「どうって、ああ、色々噂があるもんねー、まあ、概ね真実かな」
「えっ、やっぱりマジなんですか?!」
「そう、マジマジ。オレが知ってる限りでも迷宮討伐したパーティは引退か解散してるね。あ、コアを壊したからって呪われるとかは流石にないから安心していいよ」
グリーンさんが慌てて付け足す。
「噂で知ってるとは思うけど、コア破壊した人でスキルを取得した人はいないから、その辺で揉めて解散してるんじゃないかって説も濃厚だね。まあ、そんなわけでレッド君のスキル取得はないけどそれは勘弁してくれると嬉しい」
「シーカーはジンクスも大事にするからなぁ、スキルは欲しいがコアには手を出さないパーティがほとんどだな」
ちなみにスキルは後天的に訓練やスキルオーブでも取得できるが、スキルが多くなるほど後天的な取得や熟練度上げに不利に働くらしくランダムなスキル付与方法でもあるコア破壊はあまり好まれてはいないらしい。
今回の迷宮討伐は迷宮を発見してしまったブラックさん達のパーティが仕方なく処理を任されてしまったらしい。なお、わざわざ目出し帽を被っているのもジンクスの一つで後々揉めないための配慮だそうだ。
とりあえず、闇バイトではなかったことがはっきりして少しホッとしたのは秘密にしておいた。
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