闇バイトでダンジョンコアを壊したらダンジョンマスターになりました ~ここはダンマスが狩られる世界です~
水城みつは
プロローグ『ダンマスゲーム』
第1話 プロローグ
夢ノ
「集合は紙に書いてある場所に夜の八時。それと、君の名前はレッド。他の人の名前は……まあ、見たらわかると思うよ」
仕送りまでの食費に困って情報通の先輩に相談した結果がこれだ。
「これ、いわゆる闇バイトって奴ですか? 流石に犯罪は遠慮したいんですけど……」
封筒の中に確かに十枚の一万円札が入っていることを確認して目出し帽といっしょにボディバッグに押し込んだ。
「いやいや、別に犯罪じゃないから安心してよ。それに、君は既に報酬を受け取ったわけだし、これで『トレード』は完了で今から君は私の『顧客』だ」
先輩の紫色の瞳が怪しく光った気がして身構える。
「おっと、そんなに警戒しないでくれ。これは私の
「
「私の
「ちょっ、先輩! やっぱり、闇バイトなんですか?!」
「もちろん違うさ。まあ、受けたがるやつがいないだけのバイトだからな。初心者レベルのダンジョンにパーティ組んで潜るだけの簡単なやつだ。それに、上手くいけば使った剣もそのまま貰えるから割はかなり良いぞ」
「剣が貰えるんですか! それならめっちゃ優良バイトじゃないですか。むしろ、なんで先輩が受けないで俺に斡旋なんてしてくれるんです?」
初心者レベルの
当然のことながら迷宮に潜るのは命がけであり、また、迷宮に潜れるのは探索者だけであることを考慮してもメリットが大きすぎる気がしないでもない。
「あー、まあ、私は既にパーティを組んでるし、そもそも探索は副業で情報屋がメインだ。君はまだソロだろう? このバイトはソロの方が都合が良いんだよ、まあ、君以外はそこそこできる探索者だから安全にダンジョンに潜れるし良いことづくめだから気にしないでくれ」
若干バツが悪そうに頬を掻きながら帰っていく先輩を見送りながら今夜のバイトについて考える。
「場所は……うわっ、ウチのすぐ近くじゃないか――」
迷宮内には銃火器の効かない
しかし、
「――こんなところにダンジョンがあるなんて聞いてないぞ。ということは新発見か秘匿されていたわけかぁ」
迷宮の発生に関する明確な法則は判明していない。あえて言うならば既にある迷宮にそこそこ近い場所に発生することが多い。
また、迷宮は周囲の環境を模したように異界化とも言われる迷宮化現象によって発生し、その周辺地域の魔素濃度も上昇する。
そのため、迷宮を発見した場合は迷宮管理局への報告が義務付けられているのだ。
とはいえ、迷宮から産出される魔石やドロップアイテムは貴重な資源となっており、個人やクラン所有の迷宮も多い。
この迷宮もきっとそんなダンジョンの一つなんだろう。たぶん、おそらく、そうであって欲しい。というか俺は知らないし聞いてないから気にしないものとする。
「伏せられたダンジョンに、ソロが望ましいけどパーティを組む。剣も支給となるとバイトの内容は迷宮討伐か……都市伝説的な噂を除けばホワイトではないかも知れないがグレー止まりのバイトで済みそうなのは救いか」
迷宮討伐とは
迷宮が討伐された場合、
迷宮の弱体化は単純にメリットとも言えるが、迷宮再構築によってドロップアイテムの種類やドロップ率が変化するため有益な産出物が取得できなくなることも多い。
また、迷宮討伐を繰り返すと殺意の高い罠だらけの迷宮になることも多く迷宮管理局では迷宮討伐は非推奨でもある。
それでも迷宮討伐が行われるのには理由がある。
つまり、破壊役にメリットはないがパーティメンバーにはかなりのメリットがある。つまり、俺の受けたバイトは十中八九、
「迷宮討伐かぁ、まあ討伐パーティのほとんどが解散してるのは事実だしコア破壊役だけ雇うのは確かにありだよなぁ」
都市伝説や噂だけではなく、名の知れたパーティは迷宮討伐後に引退や解散をしている。場合によっては
そのため、ジンクスを気にするような探索者や上位パーティほど迷宮討伐を避けるようになっている。今では迷宮管理局の専門部隊のみが必要に応じて迷宮討伐に飛び回っているとも聞く。
「ソロだからパーティ解散とかは関係ないけど、これがダンジョンの呪いとかだったらやだなぁ。いや、しかし、呪うぐらいだったらパーティメンバーにスキルなんて与えはしないよな。んー、とすると嫌がらせ?」
迷宮討伐によるパーティ崩壊の都市伝説に思いを馳せながら探索用の防具を装備していく。
この時は迷宮討伐が俺にもたらす影響をまだ過小評価していた……。
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