第16話 特殊性癖③(閲覧注意)
全身を駆け巡る電流、そしてそこから生じる灼熱。雷から発生する膨大なエネルギーが、リリィの身体を容赦なく
「ボルティナお姉ちゃん、火力の調整はちゃんとしてね。なるべく長く楽しめるように……」
「分かってる。10億ボルト、50万アンペアってところだな。これなら、あたしの魔力も数時間は持つはずさ」
ボルティナの言う通り、今回の雷は以前の『雷行』ほどの威力ではない。しかし何度も言うが、今のリリィはあらゆる刺激に対して敏感な状態だ。
「ん゙ん゙ーー! ん゙ん゙ーーー!!」
全身の筋肉が痙攣し、拘束された四肢が踊るように跳ね上がる。リリィの意思とは無関係に、身体が勝手に動き続けていた。それはまるで、心と身体が切り離されたような感覚だ。
リリィの目に浮かんだ涙が、熱によって瞬時に蒸発する。歯を食いしばり、思考が吹き飛びそうになるのを必死に堪えていた。しかし――。
……あれ、なんか気持ちいいかも。
ふとリリィの表情が緩む。いつの間にか、彼女は今の状況に妙な快感を覚え始めていた。
全身を駆け巡る電流と、それに伴い発生する熱。まるで温かいお風呂の中で、全身を丁寧にマッサージされているかのような感覚だ。これも、もしかしてイカのヌメヌメのおかげ……?
リリィはそっと目を閉じた。電流に身を委ね、心も身体も熱く焦がされていく――。
※
やがて、終わりは突然訪れた。リリィと共に雷を浴び続けていた女王イカが、ついに限界を迎えたのだ。
「あっ、イカちゃんが……!?」
「しまった! イカの耐久力を考えていなかった!」
エアリアが慌てて声を上げ、ボルティナも驚きの表情を浮かべる。雷に焼き尽くされた女王イカは、すでに真っ黒な消し炭のような姿になっていた。
さらに、脆くなった身体がボロボロと崩れ始める。まるで巨大な砂像が崩壊していくかのように……。
当然、イカに拘束されていたリリィも巻き込まれる。彼女は力なく落下し、真っ黒な灰の山に埋もれてしまった。
「リリ姉!」
「だ、大丈夫!?」
双子の姉妹が心配そうに叫ぶ。すると、灰の山から焦茶色の腕が伸びた。
「ケホッケホッ……あぁもう! 酷い目にあった!」
灰をかき分け、煤まみれのリリィが顔を覗かせる。酷く咳き込みながらも、灰の中から力強く這い出てきた。
「リリィお姉ちゃん、平気なの!?」
「えぇ、これくらい余裕よ。私、エリートなんだから」
リリィはパタパタと身体を叩き、こびりついた煤を落とす。すると、雷によってこんがりと焼けた素肌があらわになった。
「お、おぉ……」
「す、すごいよ。リリィお姉ちゃん……」
すっかり焦茶色に焼けたリリィを見つめながら、二人はなぜか
「リリ姉、すごくいいよ!」
彼女はリリィの胸元に顔を寄せると、大きく息を吸い込み、その匂いを堪能し始める。
「ちょっと、何を……!?」
「あぁ、この香ばしい匂い……たまんないなぁ!」
「こ、こら! 焦げ臭いからやめなさい!」
リリィはボルティナを引き剥がそうとするが、彼女は言うことを聞いてくれない。やがて、妹のエアリアまでもが駆け寄ってきた。
「あー! お姉ちゃんだけずるい!」
エアリアは目を輝かせ、涎を垂らさんばかりの勢いでリリィを見つめている。彼女もかなり興奮しているようだ。
「すごい……。こんがり美味しそうに焼けちゃって……。ヴェルダンだぁ!」
「はぁ!? 私の身体を、ステーキみたいに言わないでよね!」
「ちょっと……ちょっとだけ、味見させて!」
「絶対にダメ!!」
リリィは必死に制止したが、今の二人は聞く耳を持ってくれなかった。
「いただきまーす!!」
まずはボルティナが動き、こんがりと焼けたリリィの鎖骨をペロリと舐める。
「ひゃん! ……もう! 汚いから舐めないで!」
ボルティナに気を取られている間に、今度はエアリアがリリィの二の腕に顔を近づけ、甘噛みをしてきた。
「んー! ほかほかしてて、おいしい!」
「ちょっと! くすぐったいんだけど!?」
リリィはなんとか二人の身体を引き離し、距離を取る。幸せそうな笑みを浮かべる姉妹を見て、大きくため息をついた。その吐息と共に、口から黒い煙がもくもくと上がる。
「エアリア……」
「うん、お姉ちゃん……」
二人は顔を見合わせると、「せーの!」と声を合わせてハイタッチを交わした。そして声を揃えてこう言い放つ。
「「上手に焼けました〜!!」」
「あんた達……調子に乗るのも、イ
イカ墨沼に、リリィの叫び声が響き渡る。しかし彼女はまだ知らなかった。双子姉妹の歪んだ性癖は、これだけで止まるはずもないということを……。
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