第2話 「感冒の幽霊」

王子の死後、幽霊となりて、

ひたすら彷徨い、鼻を拭い続け。

「車門二枚、どこにいる?」

毎晩毎晩、問い続けるけど、答えはなし。


ある晩、王子はひとり考えた、

「どうしても見つけられぬ車門二枚、

じゃあ、せめて鼻を拭けば、

少しは人々が喜ぶだろう。」


そこで彼は一計を案じ、

鼻孔を拭くことに決めたのだ。

「この海綿で、すべてを清めるぞ!

鼻水も涙も、すっきりと!」


王子の手が動き出す、

ぴかぴかの海綿が鼻の奥へ。

人々は突然、鼻が通る感じ、

「すごい!これでスッキリ!」と歓声を上げる。


でもすぐに違和感が広がる、

鼻が通ったはずなのに、

なぜか涙が止まらぬ!

「ま、まさか…鼻水が!」


王子の目がきらり、

「ああ、そうだ!僕の海綿が、

清潔の名の下に、

ちょっぴり悪戯を仕込んだのだ!」


人々は気づかず、ただ鼻をすすり、

「あれ?どうしてこんなに鼻水が?」

でも王子はにっこり微笑み、

「それは…清潔感を保つためだよ!」


でも何度も何度も拭いたり、

王子の海綿はどんどん汚れて、

「これでまた清潔、また清潔!」

と彼は言い続けたが、誰も信じない。


王子は疲れ果て、思わずため息、

「これでは一生、鼻水の幽霊だ…」

だがその後、王子の伝説は、

「感冒の幽霊」という噂になり、

鼻を拭く幽霊が現れる度に、

「またか…」とみんなが言うのだった。


王子はついに悟った、

「愛を見つけるのは難しい、

だが鼻水を拭いて、少し笑顔をくれる。

それでも僕は、少し満足だ。」


そして王子は、また一夜を過ごす、

海綿を手にして、鼻を拭きながら。

「でも次こそは車門二枚、

見つけられるかな?」と夢見て。

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