第4話『一服』

高校の屋上。

うちの学校はわりとレベルが高い。授業中にサボるやつなんていない。施錠されたドアをスルーして、換気用の小窓から屋上に出ようというやつもいない。

ここはわたしの特等席。

寒さはコートとマフラーでしのげばいい。天気の良い日中の一服は格別だ。

タバコスティックを吸い込み、空に向かって盛大に煙を吐き出した。アイコスの煙で雲を作ろうと思った。でも、無理だった。

「あの人、カッコ良かったな···」

自分でもらしくないこと言ってんなって思った。顔が熱い。スマホのインカメで顔をチェックした。控え目なメイクをした女子高生が顔を赤くしてた。

「恥ずかし···」

サクラ。

デリヘルの源氏名。

わたしの本名は美桜。

普通、身バレを恐れて、本名から源氏名をつけるなんてことはないらしい。

ただ、面倒くさかっただけだ。

お金が欲しい。

欲しい物がいっぱい。

すべてが欲しい。

それがわたしの望み。

スマホにメッセージが入った。放課後に予約が入った。

舌マニアだ。

ヤバい、吸っちゃったよ。

わたしはそう思いながらも、タバコスティックを吸い込んだ。

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