第4話 天使の擬態は完璧で、その武装は…エグい

秀世「三月老師…いえ!おとうさま、沙織おかあさま、劉 秀世ひでよと申します。母 秀美ひでみより優さまのボディーガードを仰せ付かり参上いたしましたが、先ほど無事結婚の合意に至りました。ふつつかものではございますが、今後とも何卒宜しくお願い申し上げます」

「(三月老師って…何!?)」


擬態…としか言いようの無い楚々とした仕草を纏った目の前の武闘派バーサク天使が…親父たちに見目麗しい艶やかな挨拶をかましている。そこだけ取ってみると…深窓の超絶美少女高校生にしか見えないからコワイ。


「(…やっぱり…秀美ひでみおばさんの関係者なんじゃん!)」


あの共同墓地での親父の自慢話プロローグは、何故か親父の高校時代に白血病で亡くなった筈の秀美おばさんの生存話に発展した(あの時代に何と骨髄移植を成功させたは良いが…秀美おばさんは生死の境をさ迷った上、つい最近まで長らく記憶を失っていたらしい)。


「(しかも…記憶が戻る前から、明秀美みんしゅうめいの名前で、か~さんのビジネスパートナーで親友だったとか…どういう偶然だよ)」


劉家のお屋敷に場所を移しての、親父と秀美おばさんの再会は…アラフィフのよい大人達が揃って泣きっぱなしだった。

…まあ、それはそのうち【幕間】で親父が語るだろうから置いておくとしてっ!

秀世こいつとの結婚の合意なんか無いから!!あ…ふつつかものは激しく同意」

沙織「まあ!丁寧なご挨拶…優、物凄く良いお嬢様じゃないの!」

「か…か~さん、騙されないで!か~さんはこいつのバーサクモードを見ていないから…これは未来の技術に裏打ちされた変身擬態機能付きの人型最終兵器。今は…お嬢様モードに変身擬態しているだけだっ」

秀世「ヒ…ヒドイですわ…優さま。先ほど私の純潔を激しく血で瀆したクセにっ!!」

三月「なんだとっ?優、貴様あっ~!!」

沙織「優!あ…あんたって子は…いくら秀世ちゃんがかわいいからって!!」


「し…し…死ぬほど人聞きの悪い…ウルトラ錯誤情報はやめろ~~!」

三月「優、お前…よりにもよってあの突き技を秀世ちゃんに当てちゃったのか。未熟にも程があるぞ」

「ごめん…そこはこいつの実力を完全に見損なっていたんだ。まさかあの突きに対して動けるとは思わなかったんだよ」


三月「じゃあ、彼女の実力は本物なんだな」


「…どういうこと?」


三月「いや、劉ちゃん…あ、秀世ちゃんのお母さんのことだが、優秀なボディーガードとして彼女をお前に付けると言われててな」


「いや!親父、突っ込ませてよ…何故にボディーガード!?」


三月「お前や沙織には悪いが、我が家は公式に劉家華僑の身内になる。そこは過去のしがらみで断れなくてな…そうするとバカな輩がお前達のところにも来る可能性があるんだよ」

沙織「それって、私にもボディーガードが付くの?」

三月「沙織には前々から付いていたよ。今回さらに強化して貰う。お前は俺の奥さんなんだから」

沙織「嬉しいパパ~、って今までも?…全然気がつかなかった」

三月「本来、劉家のボディーガードってそういうものでさ…人知れず付くんだ。転職後の沙織の海外勤務がどうしても気になってね。あの時から頼んでいるんだ。言わなくてごめんな」


沙織「ううん!パパ、大~好き~」


秀世「秀美お母様…お可哀想ですが、これはあなたの入る隙間は無いです」

「ごめん…恥ずかしくて本当にごめん。桂木家を代表して謝るよ…」

「でもさ、親父。この娘、人知れないボディーガードなんだろ?真っ正面から突っかかってきたぞ?」

秀世「それは!私どうしても優さまの実力が知りたくて…ごめんなさい!!」


「それとさ…君、八卦掌しか使えないんでしょ?攻撃出来ないんじゃないの?」


三月「秀世ちゃん、それは本当かい?」

秀世「は、はい!確かに私の体術は八卦掌だけですが、私には暗器術があります」


三月「そうだよな!…優、彼女たちの八卦掌にはそこらじゅうのものを武器に変える暗器術がセットで付いて来るんだ。攻撃力は充分だよ」


秀世「それに…私にはこれが…」


スチャッ、彼女が懐から取り出した(…制服のワイシャツの胸の隙間から出しやがった!一瞬見えた白いブラがえらい艶かしくて思わず目を反らした(汗))のは…一見、伸縮警棒?


秀世「これこそが、劉家が私の身を守る為に科学のずいを結集して産み出した最終兵器…その名も『打診棒だしんぼう』!」


「……」

三月「…いや…それは世に出さないほうが」


1980年代初期…某「世界の中心で愛を⚪ぶ」あたりなら絶対にヒロインは助からないだろうという時代に、金と権力にものを言わせて医学の髄を結集して骨髄移植を成功させちゃうような劉家。

いわばリアルショッカーみたいな劉家が総領姫のお嬢様の為に科学の髄を結集して産み出した最終兵器って…

(ちなみに名前はどう聞いても建物のタイルの剥がれを診断するアイテムと同じ…)


…突っ込みどころが…満載だっ!!


秀世「ちなみに取っ手に装着したこの笛を私が一回吹くと」


三月「ま…待てっ!…やめるんだ~!!」


パピピホ~~~


…ぞろぞろぞろぞろ…


不思議なほど響き渡る笛の音に呼応して…突然、俺のアパートの周りを黒ずくめの男たちが覆い尽くす。

まるでリアル「逃走中」のハンター…いや…ハッキリ言っちゃうと…まるで ゴ⚪ブリ…


秀世「私はこの技を、『リアルドラクエ商人呼び』と名付けました!!」


「ば…ばかっ!…近所迷惑だっ!…い!今すぐ撤退させるんだ~!!」


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