第2話 バーナード三沢店

 いずも改魁乗員による定期巡視、なんの事は無い買い出しは不定期にある。

 強襲揚陸部隊の輸送ヘリS195スパローに乗り、三沢管理空港に横付けして、三沢市内を巡視。メンバーは強襲揚陸部隊が随時に、俺達、F71BJの操縦士事シェイカー2名もランダムに選出される。

 海上自衛隊にランダムがあるのかは、同じ使いパシリだと、同じ嗜好品しか買わなくなるので、洋上生活にはとても苦痛だ。とは言え、同じシェイカーの若き興梠奏が選出されると、何故か俺が直ちに随伴となる。

 まあ奏は若いし、ショッピングとは大いに悩むもので、俺が適切な感想を述べて時間内に帰投する事から、ここは自ずの随伴となる。


 三沢改修基地を発して、俺の運転する田園自動車のLEVバンは、奏が一緒だと、三沢西地区の新繁華街ロードウエストへと進路を取る。奏は嬉々とノンウエイトフォンを翳して、どう、このお洋服。まあ5回に一回は、普段からノートに書き溜めている奏の良いところと一緒に褒めると。流石だね孝信。俺は当たり前だは言わない。そう、何故か俺には複雑な案件持ちの女子が寄ってくるから、お陰で鍛えてくれようかだ。格好いいね。そうでしょう、やっぱり。


 ◇


 三沢の西地区の新興繁華街ロードウエスト。その中でもバーナード三沢店内は、アメリカ資本が入っての、都市郊外型の吹抜けショッピングモールになって、今は廃れた青森市を軽く凌ぐ物販量がある。

 青森の沿線が隣国脅威論で廃線になっていく中でも、LEV自動車が主流となり、岩手周辺からも訪れる客はいる。景気が良い反面、北東北の警邏にも力を入れざるを得ない。


 そして、バーナード三沢店の南入り口には健気にも、立ち慣れている俺のよく知る人物がいる。傍の奏が飛び出し、薄化粧のボーイッシュ三船環に飛び付きハグし合う。まあ、地上での俺の同居人だ。

 三船環は、これでもきっちり女性であり、鶴丸航空の地上アテンダントマネージャーで三沢管理空港に勤める。

 俺達の出会いは、ありがちな懇親会で、初めから垣根は無かった。俺がもっと女性らしくと、死を二人を分かっても消して言わない事を深く悟った上で寄り添ってきた。俺も、そこまで気配り出来るパートナーにこの先出会う事は無いだろうから、3か月に一遍しか帰れない賃貸マンションを一緒に同居することにした。

 将来するんでしょう。敢えて度々確認されるが、そうだね。将来戦争になるのかもしれないのに、家賃分を貯金してもあれだが浮かぶも、環は俺の瞳の奥を見て、溜め息を二度つき、俺の背中にへばりつく。

 シェイカーの俺が死ぬ可能性は、レクチャーでは5%しか無いのに。


 この合流、いやいつもの三沢市内の買い出し合流は、俺の電話ではなく、奏が幼心に今度会えるよと都度、環に電話を入れている。規律違反だろうは、同じ三沢管理空港同士の交流には支障が無しと、少佐の柴崎遥子艦長が軽くあしらう。奏の年齢20歳を考えたら無理もないだろうかだ。


 買い出しメモを眺めがら、予算内にあたりをつけて、俺達三人でバスケットに詰め込み精算。買い出し任務は終了。後は自由時間。

 残った時間は奏のショッピングタイム。奏と環は身長が一緒で、身なりも近い。互いに洋服を当てては似合うは、そのまま自分にも似合うだろうから、あらゆる時間の短縮にはなる。

 そして、いつも馴染みの古着店ウインターミュートは鬼門だ。店主はエレナ・ミズコシで母親がアメリカ空軍で三沢にもいた事から、元地元で店を持つ事にした。若いなも、キャリアのそれはかけ離れている。転籍したアメリカにいた頃のコネクションから、古着が無尽蔵にストックがある。

 奏と環がねえねえと拝むことから、奥の在庫から次々と運ばれて来る事から、結局巡視時間ギリギリになる事はここ最近多い。環に視線を送るが、すっかり無視される。つまり、俺よりは奏の方が可愛いらしい。全く。

 何かの視線が7秒絡みつく。


「おお、孝信。奇遇だね」

「ターニャさんは、御衣装選びですか」

「そうよ、舞台がアメリカンメルヘンだから、1920年代ぽいのをね。ここしかないでしょう、ウインターミュート」


 まだ夏本番でも無いのに、ターニャ・スワロフスキーはショートパンツで均整の良い脚を晒し、つい、つい、視線が伴ってしまう。

 急な左フックが俺の右脇腹を抉る。環は抜群の保安員でもある地上アテンダントで、拳銃持ちすら恐れず、粗暴犯を警察に引き出している。


「おい、本気のボディかよ」

「ヤダヤダ、男ってものは。それで、ターニャさんよね。初めまして、孝信の同棲相手の三船環です。お話では天真爛漫とか。Интересно, понимаете ли вы сложный японский?」

「конечно.Of course.流暢なアテンドにありがとうを言うわ。でもね、へえだよ。リングもしないなんて、孝信、本気じゃ無いんだね」

「これは職務上つけない癖があるだけで、いや、」

「まあ、孝信の本気って難しいよね。ねえ孝信」


 俺は、あまりに慄き動けない。同棲はめでたく2年。普通婚約指輪渡すよな。でもいつ結婚するか分からないのに、婚約指輪ってなんだ。いや、誠意でファッションリング渡しておくべきだったか。でも、環は真顔で、何これとえらい叱責しそうだし。ここがあるからだ。

 歯軋りする環に余裕綽々のターニャ。この圧倒的勝利って何だよ。またヤバい奴と関わったか、俺は。


「待て!」

「조국에 영광이 있기를」 


 ショッピングモール1階フロアに怒号が響き。俺は環に抱き込み床に平行に伏した。この手は治安マニュアル第3章7項、テロリスト、自爆犯。伏したまま横を見ると、奏はマニュアル通りに両手で頭を抱えて伏している、流石はセンスの塊だ。

 ハッ、つい久しぶりに環に会ったものだから、ターニャを忘れた。ターニャは不動で、右耳のイヤリングに触れる。伏せろ、を全部言い切れず、耳を通ざく爆音がした。

 バン、衝撃音が鼓膜を破らず響く。来る、炸裂物質。自爆犯は金属片バッグを絶対抱えている。ただ、俺の直感だと何故かそれを感じない。何故か。ただ夥しい粉末が舞っている。これは何がだ。

 俺はいの一番に立ち上がり、確かに自爆犯が捕縛されたホールの先を見た。捜査員が粉まみれになっている。血飛沫、肉片、金属片、何かしら自爆犯の身印が何一つも無い。フロアの皆が不思議過ぎる安堵に包まれた。


 ◇


 その夜は、いずも改魁に帰投せず、俺と環の賃貸マンションに奏を迎えた。

 仮にも、完全消失した自爆犯が目の前でまざまざと死んだので、奏が簡易PTSD検査に引っ掛かり、強制休養を厳命された。柴崎遥子艦長からは、そうよ一週間面倒見なさいよで俺が保護者になり、奏を自宅賃貸マンションに預かった。

 奏の様子はと言うと喜怒哀楽は問題無いも、瞳が沈んでいる。仮にも戦闘機乗りで、有人戦闘機5機も撃墜してるのだから慣れろなんてか。目の前で自爆犯でも死ぬと、どうしても応えようかだ。このより死の薄っぺらさ。ここが引っ掛かっているのだろう。


 俺達は夕食を終えると、配信のフランス映画を見ながら談笑し、環は80年代の素材の発色素敵よね、奏ちゃんも似合うと思う。奏はメルシーボークと都度相打ちを入れる。そして奏はいつの間にソファーに沈み込んで寝息を立てた。

 ここで俄然奮起するのは環だ。自らのズボラな部屋着を全部脱ぎ去り、瞳に一気に火が着く。ああ、性欲が高まっているか。俺の手を全力で引いて、薄明かりの寝室に傾れ込む。そして手際良く俺の部屋着を脱がすと、屈み男性自身をやっと満足げに咥える。環のそれは比較しようが無いが至極だ。

 普段は三か月に一遍の一週間休暇でも、ままSEX至らない事がある。環の充足感とは、普段は男子青年そのもので、すっぴんで一緒にコンビニに行くと、俺と兄弟扱いされるのが酷くご満悦だ。こっちの方が絆深いよね。まあ愛情の形は、人それぞれだ。

 ただ環も女性で、仕事でストレスが溜まると、性欲が振り切れ、激しいSEXに火が着く。俺がいないと時は、誰かと致しているらしいが、立場上同居人にあれこれ言ってもしょうがない。むしろ我慢したら、環の抱え込む性格からどうかしてしまうだろう。

 そして、環は俺に覆い被さり、片膝を立てて。女性上位の激しいピストンに明け暮れる。いい、気持ちいい。それはそうだろう、普段どれだけ女性を捨ててるのかだから。男まさりの環、極上女ぷりの環、どちらも好きだが、どちらかのみを受け入れないと、俺達は多分上手く行かない。


「孝信、ちょっと、何で行かないのよ、行っていいから、でも、いい」

「俺だって、興奮する時はあるさ」


 俺の男性自身の逞しさは、バーナード三沢店でのターニャの生足が今も目に焼きついているからだ。初めて女性の両足を舐め尽くしたい願望に、心が囚われ、普通のSEXではまだ官能で果てそうにない。

 俺は徐に上半身を起こし、環に攻守交代を促した。環は俺の積極さに身震いしながら、互いの性器は外れると、愛液がツーと溢れた。そして俺は、ターニャの代わりに、環の右足を掬い上げながら、よく引き締まった脚を吸い尽くした。積極的な前戯に、環の両目から涙が伝う。いい。環すまない、今の俺は邪だよ。

 俺は環の両足に堪能しながら、ピストンをしていると、環の綺麗な声がえげつない嗚咽で寝室に響く。そうだろうと今悟った。環はボーイッシュだけど美人には違いないから、皆からこういうお姫様扱いされているんだろうなと、改めて思い知る。SEXに迄ボーイッシュ持ち込んでいた俺が照れくさい。


 ガチャリ、寝室のドアが開くと、奏が流れ込んで来て、寝室の小型のソファに改めて沈み込んで、俺達のSEXを眺めている。

 環は、俺との初めての積極的なSEXに咽びながら、平静さを装う問いかけをする。


「奏ちゃん、筋子入りおむすびあるから、食べてて、ハア、ハア、」

「ごめん、全部食べた」

「そう、そう、いい、そうじゃなくて、あともうちょっとでイクから、奏、リビングでネットゲームしてて」

「それも、規定遊興時間超えたから、ここにいさせてよ。綺麗なSEX、とても興味があるから」

「お願い、奏ちゃん、奏、あっち行って、美味しい夜食作ってあげるから、オネガイ。そう、ムリ、恥ずかしい。待って、孝信、イイ、凄く固い。イク、イク、イッちゃうー」


 環はこれでもかと背筋が反り返り痙攣しては呼吸も深く、ベッドに漸く沈み込んだ。俺はまだ果ててない男性自身のスキンを剥ぎ取り、ボクサーパンツとTシャツを着る。

 環が酷くノックダウンした以上、奏の夜食を作るのは俺だ。


「奏、ジャガイモあるから、ジャガイモ冷製スープでいいだろう。ゆっくり眠ってくれ」

「夜にミルク系、いいね、お腹に優しそう」


 奏は俺の背中を押しながら、さりげなく、俺のまだ起立したペニス撫でる。まあ二十歳なら男性経験もあるかで、2分いじって照れて引っ込めた。まだ2人程だったら処女扱いでいいか。

 俺の給仕で、奏とダイニングで二人でジャガイモ冷製スープを食して談笑した。1週間長いよな。私はほとぼり覚ますには丁度いい。やはり奏は二十歳と改めて思い知る。


 そして寝室に戻ろうとすると、奏もついて来た。ゲストルームはあっちだと言っても、悪い夢見そうだからと一緒にいたい。まあ、保護者兼務だったらいいか。

 しかし寝室には、いつ買ったのか、環が肌が多く見える黒のレースの下着であんぐりする。やだ、恥ずかしいの連発。急いでいつものスポーティーな下着に脱ぎ変えた。いや、SEXする気十分だったら、脱ぎ変える必要あるかで、俺はそのまま環の唇を奪い、環は無抵抗で俺にしなだれた。環の両目からは確かに涙が溢れていた。初めて知った環の女性の性だ。


 再びの伽。俺の弾力は、ターニャの両足、奏の観覧、そしてはち切れている環の媚態に受けて、いつ発射するのか見失っている。

 環の好きなスローなピストンをしながら、不意にバーナード三沢店の自爆犯消失事件を振り返る。


 自爆犯の大凡は北朝鮮だろうの潜入犯で、都市圏では1週間に1度はニュースとして流れる。この紛争への甘い雰囲気、北東北と九州から上陸して、いざ首都圏ともなると、最近の情報秘匿から、迷宮状態で詳細を知りたいだろう。それが今何故、北東北の最前線か。あるのか上陸戦。ここはブリーフィングで定型化しているが、改めて最前線になり得る北東北にいると実感はない。

 何よりは、今回は自爆犯の消失だ。三沢主管警察署の特別心理分析室の例の二人、水嶋幹司特任捜査官・戸塚香苗特任捜査官のシャキッから、ままある特異事件だと、理屈が一切不明だが受け止めざる得ない。これで各帳場を仕切っているのだから、まあ一人者には違いない。


 不意に、荒い声と律動が来たかと思えば環が果て、そのまま深い眠りに落ちた。俺は行ってない、まあいい。そのフラストレーションからターニャのはち切れる笑顔が浮かぶ。生殺しだろうが、これはまだターニャと繋がっている証だ。ソファーに視線を送ると、見事に沈んだ奏はスヤスヤ寝息を立てている、まあ見ていて、呆れる位に単調だっただろうし。

 さあ、環の両足が俺の腰にがっちり挟み込んでる。俺は、環のほぼ乳房の無い胸板に誇らしげな固い乳頭を辛うじて揉み解すも、環はそれでも意識が飛んでいる。やれか。環の両足が折れない様に外し、寝室の窓から新月を見上げる。

 不意に思いが過ぎる。いずも改魁の航行中、夜の甲板は立ち入り禁止だが、心に隙間が出来た隊員がどうしても数人いる。30cm間隔で無言で寄り添う。温もりが滑らかに伝わるのが、一蓮托生だろうか。ふっつ、ただ今は一人。地上待機が苦手なのはこういうところだ。


 ◇


 俺と奏は、事実上一週間公務休暇。待機で無いのが正直ありがたい。そして朝食の担当は奏、昼食は外食、夕食は俺の担当とルーチンが決まる。

 環の朝は特上に早い。化粧下地を整えて、朝食を早々に頂いてアパートを後にする。行ってきます。腰付きが色っぽいは職場の誰かが気付く事だろう。


 残った俺達は、三沢主管警察署に挨拶に出向き、水嶋幹司特任捜査官・戸塚香苗特任捜査官に挨拶をする。これは、いずも改魁の強襲揚陸部隊の手嶋秀和三尉のアドバイスだ。三沢主管警察署と繋がりは持っておいて損は無いらしい。

 そして、想像以外のえらく質素な特別心理分析室に通され、捜査状況を話してくれる。自爆犯は厳密に言えば消失ではなく、塩粒子で飛散したと。通常なら粉塵爆発が起きる筈だが、混在成分でも正確な結晶の塩なので爆発はしなかった。これは聖書の塩の柱になるのかと切り出す。塩になったのなら、聖書通りにあり得る事でしょう。冗談の欠片すらまるで無い。まあ、特異事案を担う部署なので、そこは話は合わせた。


 そして昼食は、俺のLEV三輪バイクに奏を乗せて、三沢を上に下にドライブ。ここは結局奏の郊外店舗の洋服巡りになる。


 夕方は、環が帰って来る前に早めに戻る。夕食の仕込みは、俺の細やかなサプライズだ。まあ環は地上アテンダントで定時に上がる事は無いので、鍋で再煮弗出来るものをメニューには起こした。ただ18時にチャイムが鳴る。宅配かと思って玄関を開けたら、息を切らした環だった。LEVSUV可能な限り飛ばして帰ってきた。おいおいも、こんな和気藹々滅多に無いでしょうと、環の仕事一筋は一体どこにだ。

 まあ、ごく和気藹々に夕食を取って、後は三人で談笑、奏がネットゲームに夢中になっていると、俺は環に手を引かれ寝室で、SEXに励む。平穏な平日で何も無いのに、環がSEXに夢中になるなんてどうかだったが、女盛りですもので一蹴された。

 環の情熱的なSEX、一方で今の俺はターニャに心を奪われて遅漏だ、SEXに浸る。ターニャと思えば良いと願うが、環は察して俺と対面の体位ばかりを選ぶ。くれぐれも環は嫌いでは無いが、心がどうしても明後日にいる。それでも環は俺に浸りに来る。

 気が付くと、ネットゲームの規定遊興時間を超えた奏が、寝室のいつものソファーに陣を取り鑑賞に浸る。ここで環は開き直ったか、男性が喜ぶご奉仕をしてくれる。世界中の女性全てがフェラチオを好きでも無いのに、奏に何を仕込もうとしているか、さあだ。そうでなくても男性自身は固いのだから、おもてなしの効果はどうかだ。

 そしてSEXに没入して5時間。環がノックダウンして、奏も飽きて寝息を立てる。俺はと言うと果ててはいないものの、まあいいか、疲れたでそのままベッドに沈む。ターニャ…やがて瞼がゆっくり落ちる。

 そしてまた朝日が昇り、これが日々のルーチンになる。


 ◇


 一週間公務休暇明けのその日、環を見送って、三沢改修基地の輸送へりの便に乗り込むその日だった。

 しかし、環は一向に玄関から動かず、艶やかな唇から漏れる。


「孝信、私達、愛し合ってるわよね」

「どうした。普通にまた帰ってくるよ」

「あっつ、ごめん、そうごめん、つい名残り惜しくて、ポロって出ちゃった。私達ファミリーな関係よね。ごめん、行かないと、メール送るから、時間があったら見てね」


 環は初速ダッシュで玄関から飛び出る。

 愛とは、まさか環から聞けると思わなかった。環は生涯男性にのめり込むタイプでは無いと思っていたので、俺の背景に何か朧に見えた末の引き留めか何かだろう。環を苦労させるのは本意ではない。ここ一週間で、環の色々な涙を見たので尚更だった。


 俺と奏は行きのタクシーの中で、つい会話に上げる。


「俺、環と結婚するのかな」

「それ、無いと思うよ。結婚したら、必ずどちらかが傷付くってね」

「それ、女の直感かよ」

「いいえ、孝信のバディ丹羽重成のありがたいお言葉だよ。SEXフレンド止まりで良いんじゃない。この目で孝信と環のSEX見てもさ、男慣れしてるけど、愛情がまるで足りないよね。孝信はまあこんな感じか、そう鈍感で、果てないけど、それもどうなのよ。先々挫いてしまう環さんに、お忙しい孝信さんに、この二人に何が出来るの。距離が0に縮まるの。無理じゃないかな。これね、何度でも言いそうだから、実に切ないよね」

「でも、地上に戻ってる時間は短いけど、一緒に暮らしているんだぞ」

「なんだろうね、同情って。それは行動原理の中での曖昧要素でしょう。感情に流されたら、誰か一人も救えないって、教練されているよね」

「一曹のおっしゃる通りです」

「一尉は、擬似家族はここで置いて行くように。これ約束ね」


 奏は興味本意で、俺と環のSEXを眺めているかだったが、環の女の業をしっかり見ている。

 俺が環に他所の男と付き合うなと言ったら、返って隠れて情事して、心が澱むかもしれない。不潔ではないが、俺にはずっと心に秘めるなんて、壊れるかもな、環は。


 ブオーン、右側には鶴丸航空の大型旅客機ワイティング818のランディングギアが開いて着陸体制に入っている。

 そう言えば、ターニャの好きな機体だな。今、ターニャはどうしているのだろうか。全く今の俺は、環から解放されたら、直ぐターニャか。ターニャについて、否定する要素はなく、全てがチャーミングだ。俺は、このままターニャを好きになって行くのだろうか。

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