第18話

ドラマの撮影が始まった。

絵里香の台本は書き込みや線が引かれ、使い込んでぼろぼろである。

ややアイドル演技だったが、絵里香は親友役をこなして行った。

主人公と親友は同じ大学の同級生。

同じサークルの先輩に心魅かれてしまう。

親友と同じ人を好きになった事で苦しむヒロインと親友。お互いへの気持ちからなかなか愛に発展しない。

「私だって辻村先輩が好きよ…… でも先輩が好きなのは真里なの」

その時、絵里香は頭の中に伊庭の姿が浮かんでいた。

どんなに愛しても、彼には婚約者がいる……

苦しい、苦しい胸をかき乱すようなこの想い。

絵里香の声が自然と震えていた。

演出家はメガホンを強く握りしめていた。

「だから、素直になって…… ちゃんと先輩に想いを伝えるのよ」

「はい、カット!絵里香ちゃん、良かったよ」

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