第11話
劇団時計坂の演技練習は、毎日というわけには行かなかった。だから、それ以外の日は貸しスタジオで、絵里香は伊庭と基礎練習に取り組んだ。
実は伊庭は10歳から劇団に入っていた。声帯が弱くて役者になる事は出来なかったが、演技の稽古は見て来て知っている。従って絵里香の演技稽古には必ず付き合っていた。
「もっとお腹の底から声を出して」
伊庭に言われて、絵里香は発声練習を繰り返
す。次に表情を作る演技を鏡を見て行う事になった。
「鏡に向かって笑顔を作って」
絵里香はぎこちないながらも、必死で演技練習をこなしていた。
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