第9話

「後2年?」

絵里香は顔色を変えた。

「はい。社長がそう言いました」

絵里香は絶句している。

翌日の朝、自宅マンションで朝食を食べていた絵里香は伊庭から話を聞いていた。

「今のままではです」

伊庭が言葉に力を込めた。

「絵里香は女優になるんです。その為に今日から僕に付いて来て下さい」

絵里香は真剣な表情で伊庭を見ている。

「今の仕事は無論熟さねばなりません。その上に演技の稽古が加わるのです。ますますハードになりますよ」

伊庭はキッパリ言った。

「覚悟しているわ」


その日の夜8時、絵里香は劇団時計坂のスタジオに来ていた。伊庭が以前担当した女優を指導した演出家と、伊庭は交流があった。

絵里香の指導を頼むと、とにかく本人を連れて来るようにとの話だった。

まずは発声練習から始まった。

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