第28話

暖希は一足先にクランクアップを迎えていた。

スタッフから白と黄色を主体にした花束を貰って撮影現場を後にした。


「おや、綺麗な花だ事!」

大家が暖希の持っている花束を見て思わず声を上げた。

「玄関に飾って下さい」

「ありがとう。じゃあ遠慮なくそうするよ」

大家がそう言って花束を受け取った。


「次はどんなオーディションを受けるの?」

母が入浴中に暖希が戻ってきたので、

心結は夕食を温めてテーブルの上に並べた。

「それが、次の仕事が来たんだ。 主人公の友人の一人の大学生なんだけど台詞もあって…… 」

暖希が照れたように言うと、心結は花が開いたように笑った。

「それはおめでとう」

暖希はその笑顔に釘付けになった。

「あ、ありがとう」

照れ隠しに暖希は黙々と食事をしていた。

「それじゃあ、おやすみなさい」

「おやすみ」

食事が済むと暖希はいそいそと2階に上がって行った。

部屋の中に入って何度も息を吐く。

心結ちゃんってあんなに可愛かったか?

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