第9話

心結は母親からのメールを見て思わず声を上げた。

「ああ、暖ちゃん、今日誕生日なんだ」

"ケーキとオードブルを注文しているから取りに行く事"

ひえー。

学校から帰ってから取りに行こう。

こうして心結は総菜屋とケーキ屋に寄ってそれらを手に自宅に戻った。


暖希が帰って来たのは午後9時を過ぎてからだった。

「お帰り。ちょっと待っててねー」

大家がそう言うと、部屋にいる3人を呼んだ。

「誕生日おめでとう!」

3人が台所に入ってお祝いを言った。

「はい、プレゼント」

大家がそう言って青い紙袋を渡した。

「みんなから」

「ありがとうございます」

暖希は早速袋を開ける。

中にはスポーツタオルが入っていた。

そして3人は各自の部屋に戻って行った。

大家がオードブルを温めた。

暖希は椅子に座った。

「どう?練習の方は上手く行ってる?」

「オーディションが近いので基礎の仕上げをしています」

暖希は唐揚げを食べる。

オードブルの隣にはちらし寿司がある。

暖希の好物だ。

さくら荘では必ず全員の誕生日を祝う事になっている。

全員揃って言うのだ。

役者になるために福岡から出て来た暖希にとっては、胸がホッコリ温まる出来事だった。

オードブルが終わるとカットされたケーキが出て来た。

ロウソクは1本。

それを吹き消した。

「おめでとう!」

大家と心結が拍手する。

そして心結は部屋に戻って行った。

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