第23話

五月の薫風が京に流るる中、正式名称「日本人民社会主義共和国」として建国を果たした新国家の中枢にて、要職を担う高官らが一堂に会し、国家運営の次なる一手を熟慮するべく議論を交えたり。この会議は共和国政府の重要課題を解決するため、内政、外交、産業政策、文化事業等の各分野を討議し、統一した方針を模索する場なり。以下、主要な参会者の氏名と役職を掲ぐ。


参会者と役職


1. 幸徳 秋水(首席評議員)

首席評議員として革命の中心的役割を担いし幸徳は、共和国の理念と根幹を指導する立場にあり、人民の意志をもって国家の未来を切り開かんとする。会議の進行を司り、各議題に対して最終的な意見を示す役割を担う。



2. 片山 潜(内務評議員)

内務評議員として、国内の治安維持や行政の管理、地方自治の強化を目指し、特に地方と中央の調和を図り、全国規模での社会主義体制を浸透させるための方策を担う。民衆運動の声を反映し、労働者・農民の生活改善に尽力す。



3. 山川 均(経済評議員)

経済評議員として、新たなる社会主義経済の基盤を構築すべく尽力する山川は、産業の国営化や労働者管理制度の実施、資本の再分配政策を強調し、国民生活の安定を図る。特に農業・工業の生産性向上と分配の公平化を目標に掲げたり。



4. アレクセイ・イヴァノフ(外務顧問官)

ロシアより派遣せられし革命家にして外務顧問官のイヴァノフは、国際関係の調整および諸外国との連携を図る。特にソビエト連邦を含む友好国との交流と対外援助の取り付け、列強からの干渉に対する対応策を進言す。



5. 田中 庄吉(農民代表・農業委員長)

農業委員長として、農村部の農民層から寄せられる声を代弁し、土地改革の推進、農作物の生産計画と供給体制の整備を担う。農民代表として農業労働の重要性を説き、農村地域の自給自足の体制を提案する。



6. 大村 清太郎(労働者代表・労働評議員)

労働評議員として、工場労働者や鉱山労働者の権利と生活改善を指導す。生産過程への労働者管理の導入を進めるとともに、労働条件の改善、労働組合の強化に尽力す。



7. 中村 中尉(軍の内通者・国防委員長)

国防委員長として、人民軍の組織化と防衛体制の構築を指導す。特に、周辺諸国からの干渉に備えた防衛計画や、兵力の再編を図り、新たなる防衛戦略を確立せんとする。



8. 釈 円信(僧侶代表・宗教評議員)

宗教評議員として、宗教的倫理観を通じて民衆の精神面での支持を得るべく、仏教思想に基づく平等理念を訴え、国家宗教のあり方と人々の心を繋ぐ道を探る。



9. 井上 昇平(学生代表・教育委員長)

教育委員長として、教育改革の推進を図り、未来の労働者と指導者を育成するための教育体制の構築を目指す。特に、労働者・農民の子弟に対する無料教育と、新体制に合致した社会主義教育を普及せしむ。



10. 尾崎 光子(文化人代表・文化評議員)

文化評議員として、芸術と文化を通じて新体制の理念を民衆に伝える役割を担う。文化活動の統制と支援を進めるとともに、社会主義に基づく文化運動を奨励す。



11. ボリス・カラーニン少佐(軍事顧問)

ロシアからの軍事顧問として、軍事作戦や防衛戦略に助言を与える。人民軍の再編や、防衛態勢の強化、並びに戦略的要地の確保を指導し、周辺諸国への備えを整える。




会議の進行


「人民の幸福と国家の繁栄は、吾らが手に委ねられたる課題である」と、幸徳が語り出す中、各評議員が自らの担当分野における報告と提案を続けたり。経済政策については、山川が「産業の国営化進捗を上げ、労働者による生産管理を拡大し、農民には自給自足の支援を増強すべき」と主張し、田中も同調して「農業に於いても耕地の共有化を進めん」と発言す。


アレクセイ・イヴァノフは、毅然たる表情で各評議員の目を見据え、静かに語り出した。


「諸君、われソビエトの一員として此処に在るを承知せり。然れども、日本人民社会主義共和国が真の独立を保ち、人民自らの手に未来を築かんとするならば、ソビエトからの完全なる従属を望むべきにあらずと我は信ず。革命は各地の人民が自らの苦悩より生み出す力に依るものであり、異国の力に依りては真の人民の国家にはなり得ぬ。


確かに、同じ革命の道を歩みしソビエトが援助を惜しまざるは、わが同志にとり大いなる恩恵なり。されど、革命に於いて必要なのはその土地の人民の声と力。異なる文化と歴史を背負いし日本の地に於いては、独自の理念と独立の精神に基づくべきことが肝要なり。今、吾輩が皆と共に学びつつあるは、まさに日本の民衆の力に依り、此の国を支えんとする強き意志なり。ソビエトの革命と相互理解のもと連携を保ちつつ、然るべき距離を置き、相互独立の原則に基づき、誇りを持って立つが肝要に思う。


吾は信ずる、独自の道を歩む日本人民社会主義共和国が、他国の模倣に留まらず、真に民衆の声を生かし、世界に独自の光を放つ新国家たらんことを、と。」


言葉の末尾に、イヴァノフは微かに頷き、日本の同志たちが自らの力で築く未来への信頼を、まなざしに宿して見つめるのだった。


他の評議員も国内の独自性を重視する姿勢を見せたり。


教育改革に関しては、井上が「労働者と農民の子弟の教育が肝要にて、未来を担う者の育成が不可欠なり」と述べ、特に無料教育の徹底が強調されぬ。


斯くて、新たなる日本人民社会主義共和国の未来を築くべく、各評議員の意見とともに、次なる方針を決定せんとする討議が続けられたり。

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