第22話

時は3月、権力を奪取せし革命の一団は、赤坂の旧政府庁舎に集結し、日本を如何なる社会主義国家として再建すべきかの討議を重ねたり。窓外には薄日が差し込むも、空は重く曇り、いまだ世の不穏なる空気を象徴せし如くなりき。だが、場内は熱気に満ち、一人ひとりの瞳には革命への信念と、新たなる国家建設への強い決意が宿りたり。


会議の冒頭、幸徳秋水が壇上に立ち、毅然と語りける。「我らが為すべきは、抑圧なき社会、すなわち民衆の手に富と力を握らせ、共に創る平等なる国を実現することなり。富と土地、また権力を独占せし旧体制に対し、我らは人民に基づく新秩序を築かねばならぬ。この日本を如何に新生させんか、皆の力を借りて成し遂げたし。」


すると、アレクセイ・イヴァノフが言葉を継ぎたり。「同志諸君、日本に於いて我が祖国ロシアのごとく、労働者と農民の自治を強固にすることが肝要なり。革命を成功に導くため、国家における人民委員会を設け、各地の民衆が直接政治に参与できる体制を整えるべきと考える。」


労働者代表・大村清太郎は、拳を固めつつ発言せり。「我ら労働者が直接、生産と分配を管理する体制が求められる。旧来の資本家が搾取し続けた工場は、我ら労働者の手に委ねられるべき。新政府は、各工場を労働者委員会の管理下に置き、生産物を人民のために配分するシステムを確立せねばなるまい。」


次に、農民代表の田中庄吉が、農民の声を代弁し、「土地の改革は待ったなしの課題なり。土地はもはや地主の手にあらず、農民一人ひとりのものにせねばならぬ。地方の農村委員会にて管理し、真に農民が自らの手で収穫を得ることができる体制を作ることが肝要なり」と熱弁をふるいけり。


僧侶代表・釈円信は慎重に口を開き、信仰と道徳の役割に触れたり。「新たなる社会においても、我らの宗教的・道徳的な基盤は必要なり。民衆の心をまとめ、道徳心を養う場として寺社が果たす役割は大きし。我が僧侶たちは貧富の差なく、人々に寄り添い、共に新たなる時代の礎を築かんとす。」


学生代表・井上昇平は、若き情熱をもって発言す。「教育の変革が不可欠なり。旧体制の偏見を排し、平等に学び合い、思索を育む教育制度を設けるべき。科学と思想を自由に学ぶ場を広げ、全国の若者が平等に教育を受ける機会を保障するは、新たなる未来の礎となるべし。」


尾崎光子は、文化の力を主張しける。「文化は民衆の精神を豊かにし、意識を高める力なり。演劇や文学、絵画を通じ、人民が理想の社会を夢見る手助けをすることが、我ら文化人の役割。芸術と教育を密接に結びつけ、心豊かな社会の建設を図りたし。」


最後に、軍事顧問のボリス・カラーニン少佐が、治安と防衛に関し提案す。「革命の勢いを確固たるものとするため、人民軍の設立を急ぐべし。国防に必要なる戦力を民衆の支配下に置き、旧体制の残党が再び反乱を企む隙を与えぬようにせねばならぬ。内外の敵を防ぐことが、新政府の安定に直結するなり。」


それぞれの意見は異なりながらも、最終的に一致を見たり。新たなる日本は、人民の手により運営され、労働者と農民、学生、宗教者、文化人が共に担う社会主義体制を目指すことに同意せられたるなり。

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