第17話 ー間唱ー 【予感/パトリシア】
――帝国学院、学院長室。
新館の高層階、学院と帝都が見渡せるガラス張りの部屋に、長身の女性が立っていた。
短い金髪に、きっちりと編み込んだ髪をバレッタで頭の後ろに留めている。体のラインの見える青い衣装に身を包み、白い羽のような意匠のマントを肩に留めていた。
帝国学院学院長――パトリシア・M・ディアス。その碧い瞳が、日の落ちた都市を見下ろしている。その後ろに二人の学生が立っている。学生たちが口を開いた。
「エイシャ公女、ナスカ・セツ・エイシャが逃亡した件ですが、未だ行方が知れず――」
「だ、そうです」
一人はセイ、もう一人は赤色の髪に金色の目をした、中等部の制服を着た少年だった。
「あら、残念。エイシャの民は私の与えた秩序を変えた者たちだから想定内だけど、ちょっと困ったわね」
パトリシアはそう言いながら二人の方を見向きもせず、携帯端末を触っている。
言葉の意味を計りかねて戸惑うセイを赤髪の少年は冷めた目で見つめた。
しばらく端末を眺めた後、パトリシアの頬に笑みが浮かんだ。予感に姿勢を正す二人の方を振り向いて、手を広げる。マントがふわりと羽ばたくように広がった。
「喜んで、幸運なお知らせよ」
「彼女たちは南区に居るらしいわ。引き止めたら……ご褒美を上げる」
「「はい」」
二人の少年は同時に返事をする。
「ご褒美のケーキは、一つだけ用意しておくわ」
「さあ、いってらっしゃい」
パトリシアは二人に向かって、飛び切りの甘い笑顔で微笑んだ。
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