7話 復讐

水商売では、本当に女性は顔と体だと思った。

男性の対応は、今までとはがらっと変わった。

誰もが、ちやほやしてくれる。

ベッドで寝ても、みんな優しくしてくれた。


だから、女性は化粧をし、整形をする。

それだけで1ランク上の女性になれるんだ。

それは悪いことじゃない。

それは責められることじゃない。


そういえば、容姿を変えたのは復讐をするためだった。

幸せになるのは、その後。


最初の復讐は、務めていた工務店のあの2人の女性。

工務店での仕事が終わった後、2人を後ろからつけた。

そしたら、公園のベンチで2人で座って一緒に笑っている。

コンビニで買った缶ビールを飲み始めたんだ。


「そういえば、最近、なぜか、あの江本って子のこと思い出すのよ。本当に貧相な容姿だったけど、まあ、その後に来た子に比べれば、やることはやっていたかななんて。」

「そんなことないわよ。1週間ちょっとで辞めちゃったじゃない。それよりは、今いる子は、出来が悪くても1年以上続けているのは立派よ。次が来ない1年間、3人分の仕事を2人でやりきらなければならなかったのは地獄だったし。」

「それは、そうね。あんな女性のことがいいなんて思ったのは間違いだったわ。」


何を言っているんだ。

そもそも3人でこなせる量じゃなかったんだよ。

今どきのITとか使って、仕事を減らすこともできたかもしれない。


なんでも、僕のせいにするんじゃないよ。

今まで以上に苛ついてきた。


もし、僕のことを褒めていたら、過去を忘れて帰っていたかもしれない。

でも、別れても僕の悪口をいい続けるなんて許せない。


僕は、後ろから近づき、細いワイヤーを2人の首にかけた。

だいぶ酔っ払っているのか2人とも気づかない。

そして一気に縛り、2人を背負った。


手には皮をつけ、ワイヤーを何重にも巻いた。

そして、首にかかった細いワイヤーを右に左に引いた。

憎しみの力は、あなた達には負けない。


そのうち、ワイヤーは首にめり込み、血がにじんでいた。

僕も辛かったが、5分ぐらい経った頃だろうか。

2人とも動かなくなった。


ワイヤーを外して、見てみると、2人は、首が血だらけになって死んでいた。

スカートは汚物でいっぱい。

お前たちには、これが似合ってるな。


僕は、トイレでTシャツに着替え、家に帰る。

着ていた服は薄手のTシャツとかだったから、鍋の中で焼いた。

血で滲んだ服をその辺に捨てるわけには行かない。


翌日、警察が公園で捜査線を張っていた。

会社関係ではないかという線が濃く考えられたんだと思う。

特に、数年前に会社に恨みをもって辞めた僕が疑われているんだろう。


でも、風俗で働いていた後の行方は分からないだろうな。

煙のように消えているだろう。

この犯罪のために消したとか。


工務店では、誰もが、自分は恨まれていないと思っていた。

ブスとは言ったけど、冗談じゃないかって。


そんな中で、僕は、風俗店の店主を通じて爆弾を入手した。

そしてピザの箱に入れて、宅配で夜7時に工務店に送ったんだ。


その頃は毎日会議をしている。

お腹も空いている時間だ。

ピザ配達じゃなくて宅配なのはなぜと気づかれたら失敗だ。


でも、そんな頭のいい奴らじゃない。

しかも、事務をしている女2人はもういないからな。

だから、そんなことも気づかないだろう。


その日、工務店で大きな爆発があり、全員が死亡した。

まずは、第一弾は終了だ。


警察では、明らかに恨みを持った僕が犯人だと考えていたようだ。

でも、魔法のように、僕の行方は消えている。

海外にでも逃亡したのかと思っているのかもね。


でも、パスポートを取った気配はないだろう。

住宅も、携帯も解約され、口座の残金もゼロとなっている。

明らかに逃亡したとしか考えられないと思う。

警察は途方に暮れているよな。


次に狙うのはベットで暴力をふるったやつ。

こいつは、練馬の自分の家で歯医者をやっていた。

観察していると、毎月月末に妻と幼稚園児の子供は実家に帰るようだ。


その時を見計らって、水道工事業者のふりをしてそいつの家を訪問した。


「あ、水道のメーターチェックね。分かった。でも、あなた、美人だね。なんでそんな工事をしているの? 僕の歯医者で働いてみない? 給料は今の2倍は出すよ。」

「いえ、上司に縛られない、こんな自由業が好きなんです。あ、別に、お仕事していていいですから。終わったら、お声をおかけします。」

「そうか、もったいないのにな。じゃあ、終わったらね。」


優しい仮面を被った狼。

すぐに女性に暴力をふるう。

奥さんにも家庭内で暴力をふるっているんだろうか。


こんなやつは、この世の中から消えればいい。


僕は、水道を止め、水道管の間に、ヒ素のボックスを繋げた。

そして、水道管の栓を開いた。

そして、ドアのベルを鳴らし、終わったことを告げてその場を去る。


翌日、新聞では、ヒ素による殺人事件が大々的に報道されていた。

水道管にヒ素が混入され、歯科医が殺されたと。

風俗店の店長は使いでがある。ヒ素も店長から入手した。


道路に水道工事の人がいたことは見られていた。

でも、ただ工事の人だという印象しかなく、だれも顔を見ていない。

だれもが、工事業者は男だと思い込んでいた。


僕も、男性っぽい服装をしていたのだけれども。

あの歯科医も、会社の作業着だから男性っぽい服かと見過ごしたのだろう。


それからも復讐は続いた。


僕を縛ったやつ。

1人暮らしだったので、宅配便を装い訪問した。

ドアを開けた時にスタンガンで気絶させ、お風呂に入れて感電死させた。


映画とかだとお風呂にドライヤーを入れるというやつがあるが、難しかった。

だから、電源から2本のコードをそのまま水に刺し、体につけた。

火花が飛び、ブレーカーが落ちて、これを3回繰り返した。


心拍を測ると、脈はなさそうだったから死んだと思う。

でも、生き返っても困るから、カミソリで手首を切ってあげた。

血がお風呂に充満していく。


もう死んだわね。

私を痛めつけた報いよ。

あの世で悔やめばいい。


僕は、その後も3人を殺した。

美人でか弱い女性がこんなことするなんて誰も思わない。

警察も、僕のところに来る気配はなかった。


でも、この体の子が今の自分をみたら、どう思うだろうか?

やめてと涙を流していたかもしれない。

復讐なんてやめて、今を幸せと感じることがいいと。

でも、もう自分の気持ちを止められなかった。

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