13話 反撃
今日、60歳の誕生日を迎える。
弁護士だから、まだ仕事を続けられる。
でも、男性の頃を含めると長い人生だった。
私の弁護士事務所は100人の弁護士を抱えるほど拡大したの。
東京弁護士会会長もしている。
でも、この弁護士達は、私がいなくても生きていける。
私はなんのために弁護士なんてやっているのかしら。
今振り返ると、私の人生は幸せだったのかな。
いろいろな経験をした。
闇バイト、学生、検事、弁護士。
地味な生活。
心が踊った女性としての日々。
邪悪な気持ちに支配された日々、いろいろあった。
女性として子供も作ろうとは思ったこともある。
でも、なんかその気にさせる男性とは出会えなかった。
強姦されたことでエッチが怖くなってしまったのかも。
せっかく貰った卵巣・子宮を十分に活かせなかったかもね。
でも卵巣のおかげで、素敵な女性としての生活はできた。
もともと女性になりたいという願望も叶えられた。
単に女装ということではなく、本当の女性に。
一方で、私は多くの人を不幸にしてきた。
本人のせいの場合もあるし、私が仕掛けた場合もある。
今、その人達はどう過ごしているのかしら。
もう疲れた。
パパ、ママは優しくしてくれた。
でも、本当の娘を殺してしまって、ごめんね。
毎朝、隅田川テラスで朝ランニングをしている。
この時間は、とても好き。
都会らしい風景の中で、さわやかな風をきって走る。
横を通り過ぎる人は、いろいろね。
顔に苦悩を浮かべている人。
恋人と笑顔でキラキラしている人。
でも、走りながら、現実世界のことを考えるときもある。
私に指示をしてきた組織のボスは引退した。
その娘がボスを引き継ぎ、今も私に指示をし続けている。
その組織から、今、総理にはある計画があると聞いたの。
中国に日本を売るというとんでもない計画が。
経済力が大幅に下落してしまった日本。
その日本を中国の支配下に入れ、独立自治区として再起させるという。
中国は策略が渦巻くしたたかな国。
最初は独立自治区なんて言っても、そのうち吸収されてしまう。
日本人として、それは許せない。
私は、過去に1度もなかったけど、協力指示を断ったの。
だって、こんな私でも日本を愛しているもの。
そう、家族はいないけど、日本を愛している。
今、ランニングをする途中で、情報を渡し、助けを求めることにしている。
アメリカ大統領の使者に。
アメリカ大統領は、大切な日本が中国の支配下に入るのは困ると言ってくれた。
アメリカもしたたかだけど、日本が中国領土になるのは嫌。
アメリカにも、メリットがあるのだから、日本を守ってくれるはず。
私は日本が好き。
悪人もいるけど、基本は優しい人たちが大勢いると思う。
私は、こういった優しい人に支えられて生きてこれたの。
どこかしら。この辺だと思うけど。
あ、いた。大きな紙袋にいっぱいのバラを持っている人。
あの人ね。
USBメモリーを取り出した時だった。
なにやらボールが足元に飛んできた。
なにかと思ってボールに手を伸ばした途端、大きな光と衝撃に包まれた。
熱い。でも、こんな所で死ぬわけには・・・。
大きな煙に包まれた隅田川テラス。
煙が引くと、半分ぐらい崩れた遊歩道が現れた。
パトカーと救急車のサイレンの音が鳴り響く。
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