あたらしいホラー
@SBTmoya
第1話 あたらしいホラー
「新しい『ホラーの概念』を作りたい」
いきなり大きく出たが、これが長年の私と、助手である篠織の望みである。
『ホラー』とは何か?
具体的に、人が恐怖するのはどのような状況だろうか?
私はこれをずっと考えてきた。
そして、ホラーとつく映画、書籍、漫画、音楽、絵画を漁り、
いくつか気づいたことがある。
音楽を例に挙げてみよう。
いわゆる「キャッチー」な音楽はこの世に5万とあるが、
「キャッチー」な音楽の、コード進行だけで考えると、実は100は行かないのである。
さらに、「すべての音楽を『ハ長調』に変換した場合」、サビの最初のコードの数はどれくらいに絞れられるかお分かりだろうか。
正解は、なんと3つである。
例外は確かにあるが、基本的にはCかFかAm のどれかなのだ。
……話が大幅に逸れたが、これは物語の作り方にもある程度当てはまり、
「こうなると、こうなる、そして最終的にこうなる」がある程度決められているのだ。
要は、テンプレートが存在すると言いたい。
ホラーに関しては、それがなかった。
考えてみれば当たり前の答えに帰結した。
いわゆる、コントやラブロマンス、ファンタジーを観にくる人は、
ある程度お決まりの展開を期待して観にくるのだろう。
しかし、
ホラーに関しては、展開の意味不明さを観客は求めてくるのではないだろうか?
そこで私は考えた。
「ホラー」とは何か。言い換えて、何が「ホラー」か?
私は、一つの仮説に行き着いた。
ホラーとはすなわち、『意味不明』の美学なのでないのか?
例えば、あなたが夜道に大男とすれ違うとする。
この大男が、よく見るとすれ違いざまに笑っている。
この大男が笑っている理由が、「実はあなたと知り合いの大男である」場合、これはホラーではない。
笑っている理由が、「実はあなたを痛めつけようとしているから」。この場合、恐ろしい話であることには違いないが、それも『ホラー』ではない気がする。
では、何がホラーか。
『大男が、なぜ笑っているのかわからないから』ホラーなのだ!
先の読めぬ理不尽かつ意味不明な展開こそが、ホラー。
この研究成果をもとに、この度私は、全くもって新感覚の『ホラー』を作成することに成功した。
これが、新しいホラーの形である!と胸を張って言えるものである。
ひとまず、以下の2作品を読んでほしい。
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