第5話 感激の一日

未来の時代へ転移してきたレオ。

二日ばかりの間に色々と確認できたのだった。


(ここへ来るなり、仰天ぎょうてんな物ばかり。未来人はここまで応用を利かせていたとは。これなら今後も色々考えがある。1年も必要無い、このまま元の時代に戻っても構わないな)



 レオが転移してきて3日目の朝を迎えた。


 ダイニングテーブルに座るマークとレオ。


「レオは朝食には何が好み?」


 レオが過ごしていた時代、食事についてはあまり良いものではなかった。

裕福でも朝食には卵とパン。昼は摂らず晩までは水だけな生活だった。

 それが、この時代では朝昼晩の3食。レオにとって恵まれた食生活だった。


 望遠鏡で太陽観測をして感心していたレオ。

当たり前がレオにとっては不思議な体験なのか、マークは次々にネタを提供する。


 そして、今日はアーミーの展示演習が行われる日であった。


 ヘリに興味を示すレオを思い、演習を見に誘ったマーク。

2人は陸軍基地へと足を運んだ。


 演習を見終えた2人は、そのまま駅へと向かった。


 蒸気機関車やディーゼル機関車を目の当たりにしたレオは、腰を抜かさんばかりの驚きようだった。


 2人が移動に使ったタクシーを、乗らずに暫くは舐めるように見て回るレオが、とても不思議に感じたマークであった。


 ガードナー宅に戻っても、レオの感動は止まなかった。


「そこまで感激することかなぁ」

「いやいやマーク、これは革命を超える文明の一大改革!」

「僕らが体験してる事は当たり前だと思ってたけど、とても貴重な変化なんだね」

「いかにも!技術の進歩は文明の発展。先人を越えるのは人間の使命!」


 ダイニングテーブルを挟んで座る2人。

晩の食事をしながら、レオは今日の感動をマークに伝えていた。


「君の望遠鏡といい、今日のメカメカしいイベントといい、感動したよ」

「あれって、フツーに陸軍のアピールイベントなんだけどさ。そこまで感動してくれたなら誘った僕も嬉しいよレオ」

「太陽が火を噴く瞬間、私は感動した!かつてから人間は星の事は興味があった。我々は足の下の土壌よりも天体の動きの方をよく知っている」

「んん?それって何処かで聞いたような……レオ、それって誰かの受け売り?」

「何?受け売りではない。私がそう感じた。何かおかしいかな?」

「ううん、そうじゃない。気にしないでレオ」


(レオって、昔の人みたいだ。ただの世間知らずではないし、無知な人間なのかな……。そうとも考えにくい。やっぱりタイムトラベラー?)


 マークにはレオに対する疑問が募るばかりだった。


「ねぇレオ。君って、ホントにこの時代の人?」


 マークはカフェオレを口にしながら、率直に尋ねた。


「時代遅れに見えるかな?それは仕方ないな。でもこれには訳があってだな……」


(何だか怪しい……。でもレオは屋上にどうやって来たのだろうか)


「レオ。君は今何をしたい?何か色々考えがあるんでしょ?」

「あ、あぁ。色々見てみたかった。幾つかはそれを君が叶えてくれた。私はこれで十分だと感じるが、まだ他にも見たいものが残されている気がするから。だからそれを見てみたい。それは……それは……」

「機械的な物は今日も見てきたけど?他に何かある?生き物とか?……動物園に行くー?全くレオは子供だなー」


 マークはレオをからかった。


「生き物……確かに興味はあるがね」

「今時の動物園じゃ、たいした生き物は見られないけど、でも行ってみる?」

「マークに任せるよ」


 そうして2人は、翌日のスケジュールが決まった。


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