第10話

 間仲人見が目を覚ましたのは、それから3時間ほど経ってからだった。

 流石に足が痺れてきてもぞもぞとしていたら起こしちゃったみたいで若干申し訳なくなったけど、朝帰りしてきて女子高生の膝の上で普通に爆睡するな。


「ん……いま何時……?」

「1時過ぎたとこ」

「……ごはん、食べよっか」

「うん」


 起き上がりキッチンに立った間仲人見が「何食べる?」と聞いてきて、私が「何でもいい」と答えると、二つの冷食がレンジで温められる。

 タレ唐揚げ丼とロコモコ丼。どっちでも良さそうな顔をしていたので、唐揚げの方を頂いた。うん、普通に美味しい。普通に。


 それにしてもこの女、「おいしいおいしい」と言いながらスーパーとかコンビニで売ってそうな冷食食べてるけど、金持ちってもっといいもの食べれるんじゃないの?


「そういえば、フライパンとかあったんだけど」


 暇なときにキッチンを漁っていたら、棚の下に使用した痕跡のあるフライパンや鍋が出てきた。それも、結構大量に。

 しかし、食材どころか調味料すらないので、何か作りたいんなら様々なものを買うところから始まりそうだが。


「使っても良いよ? あ、食材がないか」

「料理なんて出来ないから、良い。あっ、でももよこはちょっとしたがってたわ」

「もよ……? あぁ、萌子ちゃんね」

「ところであの子は、何しにここ来たの? 普通に学校行ってるみたいだけど」


 私と違って、もよこは毎日学校に通ってる。あと下校時間的に、たぶん部活もしている。

 何部かは全然知らないけど、体育ない日に体操服持ち帰ったりユニフォーム洗ってる様子はないから、たぶん文化部かな。


「んー……、本人の口から聞いてないなら、ボクから話すべきじゃないと思うけど……」

「話したくないならいい」

「両親とちょっと揉めてるらしくて。実家に居づらくなったんだって」


 話すんだ。意外。どうせまた黙ると思ってたのに。

 というかこの女、もしかして自分の秘密以外は別に隠したりしないのか? クソじゃん。


「へぇ……、そんで、そんな女を侍らせてる、と」

「侍らせてなんかいないよ。本命は、姫乃だけ」


 立ち上がってゴミを片付けた間仲人見は、私の顔をぐい、と自分の方に向けると、「んむっ……」、唇を奪った。――デミグラスソースの味がする。


「どうせ、もよこにも同じことしてるんでしょ」

「してないって」

「他の子ともしてるって聞いたけど」

「…………」


 ほら黙った。ただこの感じからすると、もよこはまだ手を出されていないっぽいな。


「……調べたんだ」

「うん」

「イケない子だ」


 そう言うと、私の腰に手を入れ、――急に、抱き上げた。思わず「えっ」と声が漏れ、抵抗するのを忘れてしまう。

 お姫様抱っこでベッドまで運ばれ、ぼすんと放り投げられる。そして――――

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