第36話 ラーメン博物館
かりんちゃん達と、新横浜でインラインスケートで遊んで早1週間。今日はかりんちゃんと2人でラーメン博物館に行く日だ。ナナに変身した俺は、新横浜駅の北改札口の前で、かりんちゃんと待ち合わせをした。
「こんにちわナナちゃん。今日も綺麗ですね」
「フフッ… かりんちゃんこそ、今日も可愛いわよ」
俺はかりんちゃんの手を取る。かりんちゃんも俺の手をギュッと掴んで手を繋いだ。2人でおててを繋いで仲良くラーメン博物館に向かう。今回は2日連続で遊ぶ予定だ。1日目はラーメン博物館で、2日目は俺の家で過ごすことになっている。
俺たちは軽く雑談しつつ、駅前の円形歩道橋を渡る。ラーメン博物館は、俺の仕事場である「新横浜スケートセンター」の行道にある。あそこではスケート教室の補助だけでなく、イベント運営スタッフの仕事なんかもやってたりする。で、帰りにラーメン博物館に寄って、ラーメン食べて帰るわけだ。
「かりんちゃんは、新横浜で遊ぶことはあるの?」
「最近はありませんねぇ。たま~に買い物でキュービックに行くぐらいですか。小学校の時は、夏は親の車で行って、日産ウォーターパークでよく遊んでました」
「なるほどねぇ。キュービックで大体買えるものね。ウォーターパークは行ったことないけど聞いたことはあるわ。何かプールとスーパー銭湯が一緒になったような珍しい感じの施設でしょ?」
「そんな感じです。でもメインが長津田、相模原方面なので、最近は滅多にこっち方面には来ないですね」
キュービックというのは「キュービックプラザ新横浜」のことで、駅ビルの商業施設のこと。ファッション店や家電量販店、大型書店、レストラン街、グルメストリート カフェ等があって、歩くのが面倒なので、俺も新横浜での買い物は大体ここで済ませる。さっき待ち合わせていた、新横浜駅北改札口のある所が、キュービックプラザの2階部分だ。
日産ウォーターパークは、先週行った新横浜公園の日産スタジアム東ゲートの所にあるプール施設だ。先週はバス停「日産スタジアム前」で降りて、西の階段をすぐに降りたが、バス停から南に少し歩くと、すぐにウォーターパークに到着する。
聞いた話だが、ウォーターパークは、プールや流水プールなんかで泳げて、フットウォーマー・ホットプール・バブルプール・ミストルーム・水プールのような、スーパー銭湯風のプールも併設されているらしい。プールとしては珍しい感じの施設だ。小学生が夏に遊ぶには良い場所だと思う。
というわけで、俺達は道なりに北上して「新横浜中央通り」を左折。中央通りに入って、少し直進してから北側の通りに入る。すぐに「ラーメン博物館」に到着。今回はゆっくり喋りながら来たが、10分程度で辿り着いた。入り口にはラー博のロゴの入った、地面に設置された黒く四角い看板が置いてある。看板の上部に、ラーメンと麺をすくい上げる箸の大きな模型。
かりんちゃんが、その大きなラーメン模型に抱き着いた所で写真撮影。俺もかりんちゃんに撮影してもらう。それからいよいよラー博の中へ。1日入場券は、大人450円、子供100円であるが、ラー博倶楽部会員で、名誉あるシルバーの称号を持つ俺にスキはなかった。フフン。シルバーの称号を持つ会員には、特典として同伴者2名まで入場料無料(常時)なのだ。俺はゲート前で、スッとスマホを懐から取り出した。
これはサトルのスマホだ。今日はナナとサトルのスマホ2台を持って来ている。ブラコン演出の為、機種と色は同じにしてある。お揃いというやつだ。外から見ても違いは分からん。このスマホにアプリのデジタルパスが入っている。
「無料なんて凄いです。さすがナナちゃんですね!」と俺を褒めたたえるかりんちゃんを幻視した。だが、しかし!!
今思い出したが、それはサトルの会員証だったのだ! ナナに変身した今の俺が使えば、不正利用になってしまうじゃないか! くっそ! 偽サトルも連れてくるべきだったか。会員情報に性別の欄があるし、ごまかしは不可能。
ああ、やっちまったよ。スマホ2台も持って来て何をやっているのか。どうもナナに変身してる時でも、俺はサトルだ。という自意識が抜けないせいで、たまにこういうポカをやってしまうんだ。ナナの姿で間違って男子トイレに入ったことも2回ほどある。
というわけで、普通にしぶしぶ1日入場券を購入しての入場。あぶねぇ、事前にかりんちゃんに自慢しなくて助かったぜ!
なお、ラー博倶楽部会員になるには、まず年間フリーパス(デジタルパス500円・アナログパス800円)を購入。期間内に3回行けば、ラー博倶楽部会員になれる。最初はブロンズ会員(年間3~5回)だが、シルバー(年間6~23回)ゴールド(年間24回以上)と、来館数に合わせて階級は上がり、入場料無料など色々な特典が付く。入会費・年会費は無料だ。
年に3回入館(※1日1回と計算)すれば、ラー博倶楽部会員として更新できるので、入場料無料は維持できる。使用するアプリがそのまま会員証になるので、QRコードで入館ができる。あっ、ただし入館すれば最低1杯はラーメンを食べる必要はあるよ。そりゃラー博入るんだからラーメンは食べるけどね。
さて、入館を果たした俺たちは、1階の体験エリア「ラー博スゴメンラボ」に向かう。ここはオリジナルカップラーメン製作所だ。スマホで麺・スープ・具材・ふた・容器を指定、オリジナルカップラーメンをその場で製造、持ち帰ることができる。また、ふた用のフレームで、好きな写真を入れてのオリジナルパッケージにすることも出来る。
かりんちゃんとは事前に打合せしているので、今日はジェミニ・ラーメンとリンクス・ラーメンのオリジナル魔法少女ラーメンを製造するつもりだ。基本料金は600円。ただし、スペシャル具材を選択すると、追加料金がかかる。
俺たちはまず、ラーメン博物館の専用Wi-Fi(無料)に接続。店内専用QRコードを読み込んで、注文ページへアクセス。そこで麺やスープや容器等を選んで、ネットで転がっていたジェミニとリンクスの写真を添付指定。注文完了時に表示されるQRコードを、受付で読み取って貰い料金を支払った。支払い後にラーメン製造開始だ。
指定できるのは、麺5種類・スープ9種類・具トッピング11種類・スペシャルトッピング10種類(季節により変動アリ)。容器、赤・ピンク。ふたのデザインは全58種類。スマホの写真をカップラーメンのパッケージに使用可能。
俺たちは以下のようなラーメンを指定した。
ナナ(ジェミニ・ラーメン)
容器赤 6個製造
平打麺(熱湯 5分)+濃厚味噌味
キャベツ+丸にんにく+★スペシャルトッピング+200円・角煮チャーシュー
1個800円×6個=4800円
かりん(リンクス・ラーメン)
容器ピンク 8個製造
細麺(熱湯 2分)+博多とんこつ味
わんたん+★スペシャルトッピング たこさんウィンナー+100円 煮玉子(半玉)+100円
1個800円×8個=6400円
完成したラーメンは、ふたに魔法少女ジェミニとリンクスの写真がバッチリ使われている。見事なパッケージに俺たちもニンマリ。1個は試食で自分で食べる用。ジェミニとリンクスのお互いのラーメンを2個ずつ交換する予定だ。後は家族や友人に配ったり自分で食べることになる。
なおここと似たような施設として、カップヌードルミュージアムでも、自分の指定したオリジナルカップ麺を作ることが出来る。場所は横浜と大阪池田。マイカップヌードルファクトリーで、麺は1種類のみ、スープ4種類、具材12種類から4種選択で製造。カップデザインは専用ペンで手書き限定。絵心が試される仕様だ。
ラーメン製造を終えた俺たちは、地下1階へ、ここは壁際に通路と店があり、駄菓子屋や喫茶&すなっくの店舗がある。狭い通路は、非常に凝った昭和の雰囲気漂う路地裏を再現した通路となっている。ここはパラレルワールドなので、正しくは照和だが。地下1階は壁際をぐるっと回る通路しか無いのは、地下2階~1階が吹き抜けになっているからだ。
俺達は、吹き抜けの地下2階へ降りる階段へ、ここから地下2階の照和時代を再現した古い街並みを見渡すことができる。
「うわぁ。これ凄いですね。写真でしか見たことない古い町並みが、見事に再現されてる」
「ええ、見ごたえがあるわね。この街並みは1950年代、世界初のインスタントラーメン、チキンラーメンが売り出された照和33年をモチーフに作られているそうよ。今の時間帯、そこそこ客がいて短い行列は出来てるけど、まだ混んではいないわね」
というわけで、俺達はラーメンを食べるべく地下2階に降り立った。色々なラーメン屋を見つつ、山形のからみそラーメンを食べることに決めた。注文したのは、からみそチャーシューメン1350円だ。8分程待って、出来立てのラーメン2つが着丼。さっそく食べ始める。
ここのラーメンは元々しょうゆラーメンだったが、客がスープを持ち帰り、味噌を入れて食べたのがきっかけで、味噌ラーメンが生まれた。この為、煮干しのきいた芳醇な味噌スープの味わいが口の中に広がる。そしてモチモチの太い平打ちの麺の感触を俺は楽しんだ。
このラーメンの特徴は、中央に乗っっている「からみそ」だ。これをいきなり全部溶かすのではなくて、徐々に溶かして、味変を楽しむのが玄人の楽しみ方だ。辛さが苦手な人は、少し溶かす程度で味わう、とこのラーメンは辛さを柔軟に変化させることが出来るのだ。以上のことをかりんちゃんに解説しつつ、ラーメンを食べ終えた。実に上手い見事なラーメンだった。
ラーメンを食べ終えた俺達は、照和を再現した街並みや路地裏で記念撮影しつつ、地下1階の喫茶&すなっくの店舗へ。ここでは照和レトロスイーツを楽しむことが出来る。遅い時間帯では酒も出してのスナックにもなるようだ。俺達はこの店で大人気と言われる、ふんだんに生クリームを使用した、チョコレートパフェ950円を注文した。
お喋りしつつパフェを完食。俺達はお茶を飲みつつ一休み。それから1階に移動して「ミュージアムショップ」へ。ここは日本各地のお土産ラーメンや、ラー博オリジナルのお菓子&グッズを販売している。かりんちゃんがとあるラーメンを見つけてビックリした。
「なんですか? このエイリアンラーメンって? なんか怖そうなパッケージですけど。見たことないラーメンですね」
「これは私がネタラーメンと呼んでる商品枠のインスタント・ラーメンね。そのパッケージのイラストの、鋭い歯と退化した目を持つ魚、有明海のエイリアンと呼ばれる「ワラスボ」を使ったラーメンよ。スープは緑色で、麺は白。ワラスボの風味が独特で、好き嫌いが分かれるわ。ネタとして買うのはアリだけど、買うなら最初は1食だけにしたほうが良いわね」
そう、このミュージアムショップには、こういった珍しいラーメンも売ってる。他にネタ枠としては、「うなぎラーメン」「むつごろうラーメン」「秋刀魚ラーメン」「カツオ人間ラーメン」「18禁ラーメン」「オリーブしょうゆラーメン」なんかも売っている。値段は2~300円程度だから、俺は全部食べたことあるけどね。
結局かりんちゃんは、エイリアンラーメン、うなぎラーメン、18禁ラーメンを買った。うなぎラーメンはいいよ。完成度が高くて上手い。うなぎの味がするかと言えば、???となるが甘い醤油ラーメンだ。だが18禁ラーメンはダメだ。カレーラーメンだが、味はいいが辛すぎる。催涙スプレーの半分の強度の辛さを誇るんだ。痛辛の宣伝文句通り、一口食うと悶絶するぞと警告したが食べてみたいらしい。チャレンジャーだなぁ……
というわけで、お土産を購入してラーメン博物館を出る。明日はかりんちゃんが大倉山に来てくれる予定だ。
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