第28話 さらば群馬


 俺は魔法少女達と接触。無事目的を果たして、群馬県を去ることになった。


 ハウスイーターを倒した数時間後に、赤城山の戦いも終わって、群馬県でのガイマの戦いは完全に終結。翌日から群馬県は平穏な状態に戻りつつあった。バスのダイヤもほぼ正常に回復したので、接触作戦が終了した俺とエインセルは、観光に出かけた。向かったのは榛名山。



 JR高崎駅の西口の2番乗り場から、榛名湖行きのバスに乗ることが出来る。ただバス本数は少ないので、朝7時ごろのバスに乗って、16時発のバスで帰って来る予定だ。移動時間は1時間半。料金は1420円。実に60個以上のバス停を通過することになる。まあ、全部のバス停に停まるわけではないが。


 向かう途中の風景は、それほど変わった所は無い。駅前は背の高い建物が多く賑やか。駅から離れると、背の低い建物や一戸建てが増えていき、緑が多くなる。横浜に比べれば道路を走る車の数は少ないが、これは朝早くだからかも知れない。そうしてバス停「榛名湖」にて降車、到着。



 榛名山と榛名湖の綺麗な景色を眺めながら、ゆっくりと歩き、途中の食事処に入った。そこで榛名湖わかさぎフライ定食とそばのセットを頼んで、榛名湖ビューの絶景を楽しみながら食事を取る。


 それから榛名湖沿いに東に歩いて、榛名公園方面に向かう。湖に沿って整備された歩道があるので歩きやすい。体内からエインセルが話しかけてくる。



――――なかなか空気が澄んでいて、綺麗な場所じゃない。ちょっと見てきていいかしら?


「ああ、俺は榛名公園に行ってから、ロープウェーで榛名山に登るから、そこで合流しようか?」


――――わかった。じゃあ行ってくる。



 そう言うとエインセルは外に出て、湖に飛び出していった。途中で見えなくなったのでクロークの魔法を使ったのだろう。




 それから榛名公園にあるビジターセンターへ到着、ここは無料で入ることが出来て、内部にある展示品で、地質・火山形態・生物環境などを知ることが出来る。そこで30分程展示品を見て、ビジターセンターのすぐ南にある榛名湖ゴーカートへ。


 久しぶりに乗るゴーカートで、シンプルな円形コースを走る。3周500円が基本だが、俺は7周1000円で沢山走ってみた。


 そして榛名湖ゴーカートを出て、道路沿いに120メートル程東に歩くと、榛名山ロープウェーの駅に着く。駅の前で乗馬体験、なんてものがあったので、生まれて初めての乗馬に挑戦。といっても、おじさんが馬を引いてくれるので、それに乗るだけだが。湖と駅の往復で10分ほど。値段は2000円だった。馬が大人しいので、首を撫でさせてもらった。


 乗馬体験が終わったら、次はロープウェーに乗って榛名山山頂へ。小さなゴンドラで立って乗る奴だ。料金は往復950円。2分半で頂上に到着。榛名湖と群馬の街並みや、長野の雄大な山々を見物した。山頂をブラブラしていると、エインセルが戻って来たので下に戻る。それから駅前の商店でお土産を購入。




 せっかくなので、帰りに榛名神社も観光することにした。榛名湖駅から14時発のバスに乗って10分程で、榛名神社駅へ到着。ここは群馬県でも有数なパワースポットとして有名だ。火の神と土の神を祀っていて、ご利益は開運、五穀豊穣、商売繁盛と案内板に書いてある。


 なんというか、参道は2つの山に挟まれていて、谷底の川に沿って、本殿へ歩いていく感じだ。両サイドの山が崖のようになっていて、自然の迫力を感じられる。緩やかな坂を登っていくと、石で出来た急階段が現れて、そこを登りきると本殿に到着。入口から徒歩15分程の距離だ。


 それからゆっくり入り口に戻り、周囲にある店で、群馬名物「焼きまんじゅう」をテイクアウト。1本はここで食べるが、2本は明日の朝食用だ。カフェに寄ってしばし休憩。おしるこを頂いた。暖かくて甘くて美味かった。それから16時発の最終のバスに乗って、ビジネスホテルに戻った。これが最後の宿泊だ。






 朝、目覚めての朝食で、俺はあらかじめ買っておいた、群馬人のソウルフード「焼きまんじゅう」を食す。基本は、何も入っていない蒸しまんじゅうを串に刺し、味噌だれを塗って両面をこんがりと焼いたもの。外側がカリッと、中はふんわりとしている。餅みないな見た目だが、食感はパンのように軽かった。今回の焼きまんじゅうには餡無し、餡入りの両方を用意している。これが人気を二分しているらしい。ぐんまちゃんアニメで学習済みの俺にスキはなかった。


 それからビジネスホテルをチェックアウト。駅からJR上越線の電車に乗って北上。伊香保温泉の玄関口。群馬県渋川市にある渋川駅で降車。


 ここからバスに乗り、50年の歴史を持つ老舗の焼肉店へ向かう。この店がカルビラーメン発祥の店といわれている。ここの人気は高く、ランチタイム直前だったが20分待って入店。まずは上州定食ディナー、ディナーだけど昼でも注文できる。それからカルビラーメンを注文。



 上州定食ディナーは、群馬特産の上州牛のロースとカルビを食べられる、ごはんとみそ汁、デザートがつく定食だ。門外不出の自家製秘伝のタレで、大変おいしく頂いた。


 次は元祖カルビラーメン。真っ赤なスープに、溶き卵、椎茸、ニラ、刻み海苔、大きなカルビ肉と麺が入っている。辛さは無指定。無料で10倍まで辛くできるが、俺は辛いの食べられんからな。それから柔らかなカルビ肉とスープと麺の絶妙なハーモニーを楽しんだ。さすがは元祖カルビラーメンといった所。


 値段は定食2700円、カルビラーメン860円。これでも前世の物価高を経験している俺から見れば、安く感じた。というわけで、ラーメンを食べ終えた俺は、再び高崎駅に戻り、冷凍焼きまんじゅう、ラスク、水沢うどん、下仁田ねぎ煎餅、ぐんまちゃんケーキ、こんにゃく味噌おでん等、お土産をたくさん買って新幹線に乗車。やや散財気味だが、群馬県は少なくない被害を出したので、たいした額じゃないが、お金は出来るだけ落としたつもりだ。新幹線が高崎駅を出発した。



「ふう、今回は失敗も無くすべて上手くいったな」


――――そうね。景色は綺麗だったし、私もなかなか楽しめたわ。


「これも白衣大観音のおかげかもな……」



 俺は車窓から、まるで見送るように山の上に見えた白衣大観音に、感謝を込めて頭を下げる。



――――フフッ、物質というのは、人の心によって維持されるものよ。近くに行かなかったから詳しくは分からないけど、あの大きな石像からは、清浄な気配を感じる。群馬に災害やガイマの被害が少ないのは、あの石像のおかげかもね。


「そうかもな……」



 新幹線は高速で、群馬から離れていく。


 さらば群馬県。


 俺たちの乗る新幹線は、一路、東京駅に向かって疾走していく。


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