第9話 横浜の危機3
横浜市西区みなとみらい クイーンズタワーA屋上
横浜を代表する高層ビル、高さ296メートルの威容を誇る、横浜ランドマークタワー。そのすぐ東には各種商業施設、ヨーヨー広場を挟んで、クイーンズスクエアがあり、その中でもっとも高いビル、クイーンズタワーAの屋上に6人の魔法少女が集結していた。
「よし、皆聞け。現在ガイマ・グループは、中区新港を移動しながら襲撃。こちらへ向かっている。ガイマ戦力は前衛にダークレイブン6、アビス・ジェリーフィッシュ1、本隊に未確認のガイマ3体だ。うちガイマ1号は、白い円盤のような形状をしている。2号ガイマは、大きな胴体に2本の巨大な腕がついている。3号ガイマは、植物が寄り集まったような形状だ。私たちはここでガイマを迎撃。まずは前衛を排除して、本隊のガイマを制圧する」
最初に発言した魔法少女は【モナセロス・ルステニア】 いっかくじゅう座・ユニコーンの魔法少女であり、魔力値140%を誇る関東最強の魔法少女だ。黒い髪と紫の瞳を持ち、頭には白い金属製ヘアバンド型髪飾り、その中心に金色の1本角、ユニコーンホーンが生えている。
服は白いドレスに黒いスパッツ。全身に白いプロテクターを装備。背中に縮小化した「一角純潔聖槍ユニコルン」を背負い、両足のブーツ側面に、「光槍ビリアト」2本を縮小化して装備している。
彼女は鋭い眼光で、周りを見渡して作戦を説明する。彼女はベテランであり、今回のような大規模ガイマとの戦闘でリーダーを務めるのは、特に珍しいことでは無い。説明が終わった所に無線で連絡が入る。
『ガイマ・グループ海上を侵攻中。後5分で「みなとみらい」へ到着』
「了解。目視確認しました。調査執行を開始します」
モナセロスは無線に答えつつ、見晴らしのいい高層ビルの屋上から、海上をこちらに浮遊飛行してくるガイマ10体を見据える。
「よし、では執行開始!」
その合図で、5人の魔法少女達は高層ビルを飛び出した。あの程度のガイマの前衛ならば、5分と経たず決着が付く。モナセロスは動かず、戦場全体を俯瞰できるここで、ガイマを少し観察することとした。 ガイマ前衛との空中戦は、横浜ランドマークタワーのすぐ南、横浜みなと博物館に係留されている、観光地として名高い帆船日本丸の真上で行われることになった。
「ファーストストライク、いっくよー!」
前衛のガイマに突進しつつ叫んだのは、モナセロスの相棒、おとめ座の魔法少女【バーゴ・スピカ】だ。赤い髪に青い瞳を持つ彼女は、頭に青い魔女帽子を被っており、青いドレスに黒いマントを纏っていた。どちらかというとSFでは無く、ファンタジーに寄せた星機装だった。
「アリアドネ・ネット!」
バーゴは、右腕の魔法の腕輪「カンバリア」をガイマに突き出し、赤く光る太い糸で構成された網を発射する。魔法による特殊攻撃だ。その網は、次々に怪鳥ダークレイブンを絡み取り行動不能に追いやった。そこへすかさず【ヴェルペキュラ・アンセル】が放った、ファイヤー・ボールが着弾する。
〇ファイヤー・ボール 射撃状態ノーマル
基本攻撃力 ⇒⇒
マジカルホーミング(魔法誘導)
オーバープレッシャ(攻撃力強化)⇒
エクスプレス (速度強化) ⇒
キリングパワー ⇒⇒⇒⇒
ファイヤー・ボールは、ダークレイブン2体を粉砕。他の魔法少女も次々と前衛ガイマを仕留める。戦闘は順調に推移していた。いつのまにか前進していたモナセロスは、さくら通り沿いにある、タワー塔屋上に着地。動きの無い3体の未知のガイマを睨む。
「前衛に戦闘させてこちらを観察か… 気に入らないわねぇ。……ムッ!?」
前衛ガイマはあっけなく全滅。すると1号ガイマから強い魔力が感知された。モナセロスが警戒していると、円盤型の1号ガイマから、大きな火球が発射された。その火球は、日本丸メモリアルパーク内の展望ツインタワーに命中した。
展望ツインタワーの片側、タワー棟Dに大火球は命中。タワー塔は爆散し、タワー棟Cと接続されていた空中通路も地面に落ちた。それを合図に、未知のガイマ3体は進撃を開始した。モナセロスは即座に5人の魔法少女に指示を出す。
「バーゴ、ヴェルペキュラ、コマ。前進してくる3体に魔法攻撃しつつ後退! ランドマークプラザ上空へ誘導しなさい! 他は私について来い!」
モナセロスが「ウィンド・ボイス」で指示を出す。これは風魔法での音声伝達魔法であり、魔法少女なら誰でも使える。エインセルが使う念話ほど便利ではないが、見えている範囲にいる魔法少女なら、たとえ隣で爆音が響いても全員聞き取れる魔法だ。
バーゴ、ヴェルペキュラ、コマの3者は、魔法を撃ちつつ後退、横浜ランドマークタワーとクイーンズタワーAに挟まれた、ランドマークプラザ上空に誘導する。一方、モナセロス、リンクス、スキュータムは、一気にランドマークプラザを飛び越え、けやき通り沿いにある「横浜美術館」の屋上に着地した。
「射撃中の3人はそのまま後退を継続。ガイマを『けやき通り』まで誘導、そこで全員で全力攻撃をかける!」
叫ぶモナセロスの眼前の広い道路『けやき通り』へ、こちらの意図通り、射撃に釣られた3体のガイマが進出して来た。
「よし、私とバーゴは1号ガイマをやる。2号ガイマはスキュータムとコマだ。3号ガイマはリンクスとヴェルペキュラに任せる。それでは全員、かかれ!」
魔法少女6人はガイマに向け全力攻撃をかける。まずは横浜美術館の正面にいる1号ガイマへ、モナセロスとバーゴの同時遠距離射撃。
〇ホワイト・サンダー 射撃状態ノーマル
基本攻撃力 ⇒⇒⇒⇒
マジカルホーミング(魔法誘導)
オーバープレッシャ(攻撃力強化)⇒
キリングパワー ⇒⇒⇒⇒⇒
〇フレイム・バースト 射撃状態ノーマル
基本攻撃力 ⇒⇒⇒⇒
マジカルホーミング(魔法誘導)
オーバープレッシャ(攻撃力強化)⇒
キリングパワー ⇒⇒⇒⇒⇒
モナセロス頭部のユニコーンホーンが強烈に光り、白い雷がガイマを打つ。バーゴも身長と同じぐらいの長い杖、魔法杖ミネラウヴァを発動。大きな火球を作り、杖で叩いて発射。両者の放った魔法は、白い円盤ガイマに命中。大きな爆発が起こる。しかし…
「むう、あまり効いていないな。マジックリフレクションか?」
モナセロスが看破した通り、円盤ガイマは、魔法反射によりダメージを最小限に抑えたようだ。円盤ガイマの中心部には、全周に36個の目玉がついていた。その目玉から、次々と火球がモナセロス達のいる方向に飛んできた。
「よし、私は近接戦を挑む、バーゴは支援を!」
そう叫ぶと、モナセロスは火球をかわしつつ突進。ブーツ側面に装着してある、縮小化された「光槍ビリアト」を引き抜く。引き抜かれた槍は、元の大きさに戻り、先端が輝く槍となった。モナセロスは、その槍でガイマに切りかかる。魔力障壁を越え円盤ガイマにダメージを与える。
「こちらの攻撃は通じる。しかし白色部分の装甲は厚い。なら狙い目は、そこの目玉!」
〇スラストスピア 射撃状態ノーマル
基本攻撃力 ⇒⇒⇒
ホローチャージ (貫通力強化)⇒
キリングパワー ⇒⇒⇒⇒
モナセロスは、光槍ビリアトを振りかぶり槍投擲を行った。キリングパワー4の攻撃は目玉部分に命中し、目玉3つを吹き飛ばした。その直後、後方からバーゴの放ったフレイム・バーストが目玉に着弾し、更に目玉を1つ破壊した。モナセロスはブーツ側面にある、もう1本の光槍ビリアトを引き抜く。
「面倒な相手ね。まだ目玉が沢山残ってる」
バーゴはため息をつき、魔法杖ミネラウヴァに魔力を流す。目玉4つを潰したものの、まだ円盤ガイマには、32個の目玉が残存していた。
一方、美術館横のグランモール公園上空では、スキュータムとコマのコンビが、大きな胴体と両腕を持つ2号ガイマと対戦していた。
【スキュータム・ソビエスキ】彼女はたて座の魔法少女で、可変する大型機械盾「アルビオン・シールド」のみを両手で持っていた。チョコレートブラウン、こげ茶の髪と瞳を持ち、緑のドレスに、黒い重装備のヘルメットと全身プロテクターを装備。大型盾は黒色に緑ラインが発光している。全体的な印象は軍隊の兵士のように感じる。彼女は攻撃も防御もアルビオン・シールドのみで行う、シンプルなスタイルだ。
正面で対峙する2号ガイマは、大きな右腕を振りかぶり、スキュータムに殴りかからんとした。ガイマの腕は、手首が無く、手の部分には3本の大きな金属爪が伸びていた。強い風切り音と共に、金属爪がスキュータムを切り裂かんと迫る。
「パワー・シールド!」
スキュータムが叫ぶと、アルビオン・シールドが光り輝き、魔力障壁を纏った。防御力が上がった盾で攻撃を受け流し、相手の胴体に急加速で突進、反撃の攻撃を叩き込む。
〇シールド・チャージ 射撃状態ノーマル
基本攻撃力 ⇒⇒⇒⇒
オーバープレッシャ(攻撃力強化)⇒
ホローチャージ (貫通力強化)⇒
キリングパワー ⇒⇒⇒⇒⇒⇒
キリングパワー6の盾攻撃を受けた2号ガイマは、衝撃で後方に数メートル飛ばされる。が、2号ガイマは即座に反撃。左ストレートを打ち込んでくる。スキュータムは、パワー・シールドで正面から受けて立つ。
「ぐっ!」
スキュータムの装備するタイタンブーツは、特殊能力として、空中で踏ん張ることができのだ。ストレートに押し込まれ、数メートル流されたが、その後は力が拮抗して2号ガイマの動きを抑え込む。スキュータムの魔力値は、関東最強のモナセロスに次ぐ2位。魔力値130%だ。この豊富な魔力を背景に、強力な攻撃と防御を行える。
動きを抑え込まれた2号ガイマに、後方から2本の強力な魔法弾が撃ち込まれた。
〇スターライト・レーザー 射撃状態ノーマル
基本攻撃力 ⇒⇒⇒
オーバープレッシャ(攻撃力強化)⇒
ホローチャージ (貫通力強化)⇒
エクスプレス (速度強化) ⇒
キリングパワー ⇒⇒⇒⇒⇒⇒
「ダメージは通る。でも硬ったい胴体ね!」
キリングパワー6の攻撃を行ったのは【コマ・ベリニセス】かみのけ座の魔法少女だ。紫の髪と黒い瞳を持ち、光輝く髪がトレードマークだ。紫のドレスで腕のみにプロテクター、背中に天使の羽根が付いており、右腕にラウンドシールドを装備している。ファンタジー風の星機装である。
彼女の武器は髪そのもの。髪量は変身前の3倍、長さは自身の身長を越える。この髪に魔力を貯めこむと髪が輝く。そのため込んだ魔力を一気に放出しての連射攻撃、収束攻撃が彼女の持ち味だ。
髪の先には「射撃魔道具ディアデム」が6本付いており、基本攻撃力1のライトニードルを、最大で60発連射できる。また、ディアデムを3本ずつ束ねて、収束攻撃であるスターライト・レーザー2本を放つことも出来る。
彼女を能力を最大で生かすのは、連射による雑魚狩りだ。スターライト・レーザーは強力だがチャージに時間がかかる。ということで、今回の相手はいささか相性が悪いものの、スキュータムの援護を受けつつ、彼女は攻撃を続行する。
激しい戦闘の余波で、地上施設は被害が拡大しつつある。グランモール公園の木々はなぎ倒され、暑い夏には子供たちで賑わう公園噴水も、ガイマのパンチで大穴が開いた。また横浜美術館にも火球の流れ弾が着弾し、火災が発生している。
横浜を守る為の魔法少女達の戦いは、まだまだ続く……
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