第18話 サイハテの村人は能力を使わなくても強いらしいです
イダーテお兄さんのおすすめのお店はどれもサイハテ向けのお店だった。
獣人や重量のある人も困らないよう机や椅子に強化魔法がかかっており、安心して過ごせるようになっていた。
ランチを美味しく食べて一息ついた頃。
近くに武器屋があったので稽古用に防具をみておこう、という事になった。
都会はなんでも揃っているからいいね。
視線さえなければね。
「店員さん獣人さんだったね。初めてみた。ふわふわだった〜」
獣人は至る所にいるけれど、視線が気になってみれなかったか。
肉食系の獣人はどちらかというと見た目強そうな人にしか興味がないからしつこく見てこない。
まあ、強いと分かるとしつこいんだけど。
「私の学院時代の友だちも獣人のハーフの子がいるよ。動物に変身できるの」
「「動物に!?どんな!?」」
さー当ててみてーと言っていると、どこからか悲鳴が聞こえた。
「強盗!!!!」
突然アクセサリーショップの方から男が飛び出してきた。
よく手元を見てみると片手にナイフ、背負っている袋から高そうな宝石や真珠が飛び出している。
「どけええええええ!!」
いけない、こちらに向かってきている。
杖を取り出そうとするとシータが止めてきた。
「いいよ、ここはオレがやる」
そう言って歩いて男の方へ向かう。
威圧を使うなら、と結界魔法を張ろうか悩んだ瞬間。
シータがナイフを奪い、男と宝石の入った袋がふわりと宙を舞った。
ベシャ、という音と同時に男は地面に突っ伏し、宝石の入った袋はエリーの方に飛んで来たのでキャッチした。
おおーという拍手が沸き上がる。
「「(シータ)お兄ちゃんが、威圧を使ってない!?」」
いや普通に褒めてあげて。
連絡がいっていたのか、憲兵団に強盗を引き渡すとお店のオーナーさんが何度もペコペコと頭を下げてきた。
「本当にありがとうございます〜!!あまり高価なものはお渡しではないのですがよろしければお礼させてください」
オーナーさんさんが店に案内してくれた。
強盗はかなり高価な宝石を持っていたようだが、普段使いのものが多いようだ。
「没落した貴族が宝石を売りにきていまして、本来でしたら奥に案内するのですがやけを起こしたのか店先で宝石を取り出してきまして……」
オーナーさんが涙目になってシータの手をとりブンブンと振る。
「安全面がなっていないと店の評判も下がるところでした。早々に捕まえて下さってありがとうございます」
どれか気に入ったものがあればおひとつ、と勧めてくるとじゃあ、とシータは何やらごにょごにょとオーナーさんに耳打ちした。
「ええ、ありますよ。こちらへ」
ちょっと行ってくる、とオーナーさんと一緒にシータは奥へと行った。
アクセサリーとか興味ないだろうに、何を選んだのかな。
「ディナ、顔がすごい緩んでるよ」
うるさいわね、とペしりと音が聞こえる。
ディナは可愛いものが好きだからこれ欲しい〜とか言い出しそうなのにショーケースを見ようとすらしていない。どうしてだろう。
「ディナは気になるものはないの?」
「私はいいや、無くしそうだし稽古の時危ないし。あ、でも大人になったらピアスつけたいな。お母さんみたいなの。お父さんからの贈り物なんだって!」
確かにエルダさんピアスつけてたな。
とても似合ってるしシルディールさんセンスある。
とはいえ、やっぱり気になるのかチラチラと横目にそわそわしている。
「ディナ、このリボンとか綺麗だよ」
ヴィラが指差したその先にはリボンのコーナーがあった。
刺繍やレースのリボンはカラフルで白に近い髪色のディナに似合いそうだ。
「わー可愛い、でも汚しちゃいそう」
「これ保護魔法付与されてるよ。いつも使ってるリボン千切れそうだし交換したら?」
保護魔法は強化魔法と違って耐久性には欠けるけれど、汚れに強い。
リボンだからお値段もリーズナブルで可愛い。
「買ってくるー」
ディナが選んだのは濃いめの水色と黄緑色のグラデーションのしっかりしたリボンと濃い青にレースのついた繊細なリボン。
普段用とおしゃれ用かな。
「さすがヴィラ」
「別に……変に遠慮してたみたいだから。エリーお姉ちゃんはいいの?」
私はトラウマがあるので(※14話参照)
にこり、と何も言わずにいると、ヴィラはごめんなさいと呟いた。
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