第17話 村人たちは視線が気になるけど楽しんでいるようです

今日は初日ということでぶらりと王都をまわることにした。

迷子になった時困らないように全体把握した方が良いもんね。


「エリー!みてみてーこれすごく可愛い〜」


ディナが洋服屋のショーケースに飾られている猫耳フードパーカー、ではなくその下の鞄を指した。


「革の鞄?おお、なかなかお目が高い」


一見お花や鳥の刺繍が施してある可愛い鞄だが、よくみてみると強化魔法と拡張魔法が施してある。いわゆるマジックバッグだ。


「本当だ……王都のものって高いのね。値段が可愛くないわ」


丸がいっぱいの金額を見てがっかりするディナ。


「これは魔導具だからね、高いのは仕方がないよ。普通の魔法が施してないものなら安く買えたりするから、時間ある時に可愛いの探してみようか」


「うん!」


学院に通いたいかどうかはこの子たち次第だけど、お祝いに鞄をプレゼントしてあげるのもいいな。魔法付与、自分でやるのもいいけど得意なあの子に依頼しようかな〜。

エリーは学院時代の旧友の顔を思い浮かべた。


元気にしてるかなぁ。


ふと、シータたちをみると隣の魔道具屋を覗いていた。

頑丈そうかどうかみたいな話が聞こえてくる。


二人とも、魔導具は頑丈さで選ぶんじゃなくて目的に合ったものを選んで使うものなんだよ……。


とはいえ、楽しそうで何よりだ。

順調順調。


そう、例え周りにとてもヒソヒソじろじろ見られていたとしても。


「ああ、背中が気持ち悪いよぅ」


______


王宮にある小さな一室。

あらゆる魔導具が詰め込まれており、まるで研究所のような部屋に青くゆらめく影があった。

壁に星座が映し出され、魔術師の出立をした彼女の目は青く光っていた。


「強く光り輝く星が4つ、鳥が1羽。東に黒の流星により星は2つに分かれ、北に。一つ陰り、一つ黒く染まる試練あり」


手の中の小さな光を見つめる瞳が揺れ動く。


「それらを救い、救えずともさらなる困難が待ち受ける……」


シャラン、と耳飾りの音がすると光は静まった。


「エリーも大変ね」


ため息をつくと、何かをサラサラと紙に書いてベルを鳴らした。


「御用でしょうか」


音も立てずに現れたメイドに先程書いた紙を渡す。


「お父様に渡して。それと必要ないかもしれないけど一応勇者を呼んで、多分いらないけど」


「勇者様ご一行は現在ダンジョンにいらっしゃるかと……」


「うん、いらないと思うけど。念の為だから、いらないと思うけど一応呼んでおいて」


いらないを連呼するご主人様。

メイドは顔には出さなかったが内心勇者に憐れみを感じた。


「魔物が襲ってくる、勇者を呼べってあったから」

「占いでそんなことが?」


うん、でもいらないと思う。彼女たちがなんとかしてしまうだろうから。


そう言って彼女は杖を振り羽の生えた猫へと姿を変える。

窓際に立ち、頼んだよと言うかのようにニャーと鳴くと外へと飛び出していった。


______


一通り見てまわった頃、ディナとヴィラのお腹が鳴った。


「そろそろお腹すいたねー」

「そうだね、何か食べようか」


どこか良さげな店はあったかなと思い出そうとしていると、シータが紙に書かれた何かを読み込んでいた。


イダーテお兄さんはどこにでも居るようですー

〜王都おすすめランチ編〜


お腹すいたな〜洋食ならココ!

◯フォン珈琲 

トロトロオムライスがオススメ☆

ホワイトソースとデミグラスソースの2種類がかかった贅沢なオムライス!

モーニングはもちろん、定番のクリームソーダや本格的な珈琲が楽しめちゃうよー


洋食?和食?肉食?草食?選べない!そんな貴方に

◯キッチン・ラララ

あらゆる国の料理が食べれちゃう、なんでもありのレストラン!

なんと勇者が旅中で食べているとされるスープや干し肉でさえもメニューに!?

もちろん普通のお子様ランチもあるよー


ケーキが食べたい?そんな貴方に穴場スポット

◯パティスリー・ベリベル

見た目も美しいフルーツたっぷりケーキが人気のお菓子屋さん!

日持ちする焼き菓子も販売してるよ☆

甘いのが苦手って人にも超おすすめですよー


等々。


「ハッ!つい読み込んじゃった!」


ディナやヴィラも紙に釘付けである。


「これどうしたの?」


「さっき、12時だなぁって思ってたらイダーテお兄さんがはいコレあげるよーって言って去っていった」


どこにでも出没するなぁ。

イダーテお兄さん、実は転移の魔術師だったりする?

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