第29話 伝説のお宝アイテム作り
ゴブリンたちと契約したことで、とりあえずダンジョン内にはゴブリンとスライムの2種類が用意できた。
次はアイテムを作っていこう。
新しいダンジョン用に宝箱を作り、中身のアイテムも自作しないといけない。
ダンジョンを運営するのってなかなか大変だ。
新しいダンジョンも全3階だけど、さすがに一本道じゃなくて、ある程度ダンジョンらしく入り組ませて、部屋もいくつか設置した。
宝箱は10個用意して、全ての階に3つずつ配置。
3階の一番奥には、クリア報酬として最も豪華なお宝を置く予定だ。
母さんから教わった家事魔法が、アイテム作りにも便利だった。
ポーションをいくつか作って、母さんの真似をして魔力補給用のクッキーも焼いてみる。
ポーションだけじゃ味気ないからね。
「レイ、いい匂いがするね!」
作業に集中していると、メリアが部屋に入ってきた。
「ダンジョンの最後にもらえるクリア報酬を考えてるんだ。伝説の武器みたいなのがいいと思うんだけど」
「それならアタシも手伝う!」
そう言ってメリアは、なぜか布と針を取り出した。
「アタシ、ぬいぐるみ作るの得意だよ!」
「えっと……ダンジョンにぬいぐるみ?」
「いいでしょ?」
「ま、まあ……たまにはそういうのもいいかな」
メリアは嬉しそうに布を広げ、手際よく形を整えていく。
意外と真剣に作業していた。細かいことは苦手だと言ってたけど、ぬいぐるみは好きなのかもしれない。なんだかんだで女の子だもんな。
俺もクッキーを焼きながら、横目で進捗を確認していると――。
「できた! どう?」
メリアがさっそく完成したぬいぐるみを見せてくれた。
俺はそれを手に取ってみる。ちゃんとしっかりと縫われているし、綿も詰まってて丈夫だ。
普通に商品として売られてても問題ないクオリティに見える。
「すごい、結構上手だね」
「そうでしょ! だってお姉ちゃんだからね!」
「タコのぬいぐるみを作るなんて器用だね」
「犬だよ!!」
えぇ……?
どう見ても足が10本以上あるんだけど……。
「これは足じゃなくて指でしょ!!」
指だったのか。
なんで足の先でさらに分裂してるんだろうって不思議に思ってたけど。
これじゃあクリーチャーじゃないか。
「ところで頭が左右に二つあるのは、双頭の悪魔ってことでさすがにあってるよね?」
「こっちは尻尾!!」
メリアが怒って頬を膨らませている。
でも、その手には次の布が握られていて、もう新しいぬいぐるみを作り始める気満々のようだった。
まあ、手伝ってくれるのはありがたいかな。
ポーションばかりよりも、タコのぬいぐるみもあったほうが、遊び心があって面白いと思うし。メリアは犬だって言い張ってるけど。
できたアイテムを宝箱に入れながら、ダンジョン内の配置を決めていく。
この部屋には回復アイテム、あっちには装備品、と一つ一つ慎重に運んでいった。
「レイ、そういえばあの子は?」
「あっ、そういえばそうだった」
メリアの言葉で思い出す。
実はスライムだけじゃなくて、ゴーレムも作ったんだ。
でも、このゴーレムは戦闘用じゃない。
色々と手伝ってもらうためのサポート役として作ったんだ。
「おーい、宝箱を運んできて」
呼びかけると、コアルームの奥からゴーレムが姿を現す。
石でできた体を揺らしながら、のそのそと歩いてくる。
そして器用に宝箱を持ち上げ、指示された場所まで運んでいった。
「へぇ、上手く動くね」
「うん、いい感じでしょ? 重いものを運んだり、色々と雑用を手伝ってもらおうと思って」
まだ試作段階だけど、必要な機能はこれから少しずつ追加していく予定だ。
ダンジョン作りを始めたばかりで分からないことも多いけど、その分やれることもたくさんありそうだからね。
誰かに任せられるところはどんどん任せていきたいんだ。
「レイって本当に色々考えてるんだね」
「そうかな? まだまだ全然だよ」
「でも楽しそう! アタシも手伝うから、もっといいダンジョンにしようね」
メリアの元気な声に頷きながら、俺は次の宝箱の配置場所を考えていく。
やがて宝箱の配置も完了した。
基本的なダンジョンの設計は出来たものの、どこか物足りない感じがする。
ただの迷路のような通路と部屋だけじゃ、きっとつまらないはずだ。
「ゴブリンの居住区みたいに、ダンジョンの中に草原や川を流したりするのはどうかな」
「さすがメリアお姉ちゃん! それいいアイディアだよ」
「えへへ、そうでしょ! だってお姉ちゃんだからね!」
居住区で出来たんだから、ダンジョンでも同じことができるはずだ。
他にも、洞窟を通り抜けることで先に進めるようにしたり、景色に変化をつけたりすれば、冒険者も飽きないんじゃないかな。
そう思って試してみようとした時、コアから警告が発せられた。
確認してみると、どうやら容量が足りなくなってきたらしい。
だけど、ちょうどコアの経験値も溜まっていた。
この間から動物たちが勝手に入ってきては狩られていったおかげで、少しずつ経験値が溜まっていたみたいだ。
さっそくコアレベルを上げてみる。
光が収まると、コアレベルが3になっていた。
容量も増えたので、早速3階に小さな自然エリアを作ってみた。
川のせせらぎや木々のざわめきが、ダンジョンの無機質な雰囲気を和らげる。
うん、結構いい感じだな。石畳のダンジョンから急に草原になるって意外性も新鮮で面白いし。
こうなると、この環境に合ったモンスターを配置したいよね。
森のエリアなら森の生き物、川のそばなら水棲の魔物とか。
なので、さっそく捕らえたままのサーベルタイガーの部屋へと向かった。
鍵を開けて中に入ると、即座に巨大な虎が襲いかかってきた。
どうやらこんなところに閉じ込められていたことで、かなり怒っているみたいだ。
「まだ反省してないの?」
メリアが一歩前に出た瞬間、猛獣の威圧的な態度が一変した。
サーベルタイガーは大人しくなり、心なしかぶるぶる震えているような気がする。
まああんなパンチを食らったら、誰だって怯えるよね。
「……にゃーん」
体長が俺の倍以上もある巨大な虎が、まるで子猫のような声で鳴いた。
というか、虎ってにゃーんて鳴くものなのかな。もしかして本当に大きな猫なんじゃ……。
とりあえず、大人しくなってくれたのでダンジョンコアに登録し、自然エリアをうろついてもらうことにした。
けど、そこで新しい問題に気がつく。
そういえば、虎って何を食べるんだろう。肉食だよね?
でも、この自然エリアはさすがに動物を住まわせるほど広くない。
「メリア、ちょっと外に狩りに行かない?」
「虎さんのご飯?」
「うん。せっかくだから、グリズリーでも捕まえてこようと思って」
メリアと一緒に森へと向かう。この辺りにはジャイアントグリズリーが生息しているから、きっとすぐに見つかるはずだ。
案の定、大きな足跡を見つけた。跡をたどっていくと、木々の向こうに巨大な熊の姿が見えてきた。
「アタシが先に行く!」
「うん、お願い!」
メリアは素早く熊へと近づくと、一撃でジャイアントグリズリーを仕留めた。
うーん、さすがお姉ちゃん。俺の出番は一つもない。
仕留めた熊をもって、自然エリアに戻ってきた。
魔法で肉を切り分けて、一番良さそうな部位を選ぶ。
サーベルタイガーのところへ持って行くと、途端に目を輝かせた。
美味しそうに頬張る姿を見ていると、なんだか可愛く思えてくる。
やっぱり猫だなこれは。
「肉が少し余ったね」
「もったいないから料理してみない?」
「そうだね。お母さんから教わった料理魔法を使ってみよう」
残った肉を薄く切り、調味料を揃えて火を通す。
母さんに教えてもらった通りにやってみると、いい香りが漂ってきた。
「わぁ、おいしそう!」
「ちょっと味見してみる?」
メリアに一口分を差し出すと、目を丸くして驚いている。
「すっごくおいしい! レイ、料理上手だね!」
「お母さんに教わったからね」
二人で座って、グリズリーの肉を頬張る。
森の中で食べるご飯は、どこか特別な味がした。
ふと、そういえばメリアとこうして二人でご飯を食べるのは、なんだか久しぶりな気がした。
家の中にいたころはいつもずーっと一緒だったのに、最近はダンジョン作りで忙しくて、ついついバラバラで行動してたんだよね。
「ねえレイ、また一緒に料理しようよ」
「うん、ちょうど僕も同じことを考えていたんだ。こういうのもバーベキューみたいで楽しいよね」
メリアと一緒に食事の計画を立てながら、ダンジョン作りの合間のひとときを楽しんだ。
時にはこういう時間も必要なのかもしれないな。
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