第2話
彼女はリビングのソファに座り、疲れた体を少し休めようとした。モニターの画面には未完了のデザインが表示され、集中力を振り絞って最後の仕上げに取りかかる。しかし、心の中ではどこかで「彼はどうしているのかな?」と考えていた。
ふと、スマホの通知音が鳴った。彼女は反射的に手に取り、画面を見てみる。そこには彼からのメッセージが一通。
「お疲れ様。仕事はどう?」
彼女は少し驚きながらも、すぐに返信を打つ。
「あ、ありがとう。今日はちょっと忙しいけど、もう少しで終わるよ。あなたは?」
すぐに彼から返信が来る。
「こっちもまだ終わらない。年末の締め切りが迫ってるから、休む暇がないよ。」
彼女はそのメッセージを読んで、思わずため息をついた。二人とも同じように忙しく、少しでも時間を作ろうと思っても、それがなかなかできない現実に胸が痛む。
「私も。でも、なんとか明日には終わらせるから、あと少し頑張ろうね。」
「もう少しだよ。今日もお疲れ様。」
この短いやり取りで、彼女は少しだけほっとした気持ちになった。彼とお互いに「頑張っている」と伝え合うことで、孤独感が少し和らぐ。
その後、彼女はスマホを置き、デザイン作業に戻ろうとした。だが、その時、彼女の心の中でふと小さな声が響く。「本当は、今日、会いたいな。」
その思いが頭をよぎった瞬間、彼女は再びスマホを手に取った。スクロールして、彼に向けてメッセージを打つ。迷いながらも、最後にはそのまま送信する。
彼は、ふとスマートフォンを取り出して、彼女の名前が表示されたLINEの通知を見つけた。「メリークリスマス。」とだけ書かれたメッセージ。特に何も言わなくても、二人にとってそれが一番の言葉だと思った。
彼は思わず微笑んでいた。画面に触れる指が少し震える。彼女も仕事の忙しさに追われていたはずだ。二人とも、会えないことに寂しさを感じている。でも、今はそれが当然のように思えた。この一日、二人で過ごせなくても、それぞれの場所でお互いの存在を大切に思うことができたから。
彼は少しだけ心を落ち着け、返事を打った。
「メリークリスマス。」
その言葉が送信されるのを見届けて、少しの間、手を休めた。返信が来るのを待ちながら、心の中で彼女がどう感じているのか、どんな表情をしているのかを想像する。彼女が笑ってくれることが、彼にとって何よりも幸せなことだと思った。
すぐに、画面に「あなたと過ごせないのは寂しいけど、いつも想ってる。」という返事が届いた。彼はその言葉を何度も読み返して、深呼吸した。そして、しばらく画面を見つめていると、あたたかいものが胸に広がっていった。
会えなくても、少し離れていても、この気持ちが変わらないことに安心し、二人の関係がより深くなっていることを実感する瞬間だった。
そして、画面の向こう側の彼女も、また同じように心を温めているんだと思い、ほんの少しだけ涙がにじんだ。それが、遠くからでも伝わる心の温もりだと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます