第2話
フランスの小さなアパートメントは、静かな朝を迎えていた。窓の外には、まだ降り続ける雪が柔らかく街を覆っており、白く輝く景色が広がっている。アパートの内部は、シンプルだが心地よい温もりに包まれていた。天井の低いリビングルームの一隅にある小さな木製のテーブルの上には、数枚のクリスマスカードが無造作に重ねられ、カップとお皿が並べられている。暖房の音が微かに響き、室内の空気は暖かく、心地よかった。
部屋の隅には、大きな窓の前に小さなツリーが置かれており、まだ夜の余韻を残す中、外の雪を見つめるように飾りが煌めいている。そのツリーの周りには、家族の贈り物が散らばっており、目を引くようなラッピングペーパーに包まれた包みがいくつか置かれている。
リビングのソファには、眠っていた子供がふと目を覚まし、目をこすりながら静かに起き上がった。顔にはまだ眠気が残っているが、目を開けるとすぐに心の中で何かが弾けたような気がした。子供は寝ていた間に、夢の中でサンタクロースが訪れたことを感じていた。まだ現実の中でそれを確かめることができていないことに少し不安を覚えながら、子供は母親のところに歩み寄った。
「お母さん、今日ってクリスマスだよね?」子供は眠たげな声で尋ねた。目を大きく見開きながら、母親を見つめるその瞳は、期待と不安が交じった表情をしていた。
母親はキッチンの作業を続けながら、微笑んで子供を見つめた。食器がカチャカチャと音を立て、キッチンにはスープの香りが漂っている。窓の外では雪がしんしんと降り続き、その音はほとんど聞こえない。アパートの小さな暖房が低く唸る中、母親は短い手を振って、子供に優しく言った。
「うん、今日がクリスマスよ。でもサンタクロースはまだ来てないみたいよ。」母親はリズムよく皿を並べながら続けた。「もしかしたら、夜遅くに来てくれるかもしれないわね。」
子供は少し不満そうに唇を尖らせながら、背伸びをして窓の外を見つめた。外の雪景色が広がっており、道行く人々が足早に歩いているのが見える。家々の窓からも温かな光が漏れ、町全体が静かなクリスマスの雰囲気に包まれているのがわかる。
「そうなんだ…。」子供は不安そうな顔をしながら、しばらく黙った。その目は再びプレゼントが置かれているツリーを見つめた。手が伸びそうになったが、まだ早いと思って手を引っ込める。
「でも、サンタクロースは絶対に来るわよ。」母親は振り返り、にっこりと笑った。「クリスマスの夜、きっと何か素敵なものを持ってきてくれるわ。」
子供は少し安心した様子でうなずきながら、また窓の外を見た。雪がどんどん降り積もり、遠くの家々の屋根もすっかり白く覆われていた。フランスの小さな町でのクリスマスは、静かで優雅なものだ。
母親はその後、朝食の準備を続けながら、ふと目を細めた。子供がサンタクロースを信じる時期は短いものだと知っているから、今この瞬間を大切に思う気持ちが強かった。家族で過ごすクリスマスの温かなひとときを感じながら、心の中でひとしきりの幸せを噛みしめるのだった。
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