第3話
朝の光がゆっくりと差し込む。家の中は静まり返り、外の雪景色がそのまま窓から流れ込んでくるように感じられる。雪は一面に積もり、地面はすっかり白く覆われていた。空気は澄みきっていて、部屋の中にいながらもその冷たさが感じられた。暖炉でまだ静かに燃えている火の光が、薄くぼんやりと部屋に広がり、その温もりが冷えた空気を少しずつ解きほぐしていく。
家の中に漂うのは、どこか時間が止まったような雰囲気だ。静けさが支配し、暖炉の炎の音だけが軽く響いている。雪は降り続いているが、その光景を見ていると、心のどこかが軽くなったような気がする。
その傍らで、父親はゆっくりと目を覚まし、毛布を引き寄せて体を起こす。眠気の残る目で、窓の外の景色を眺める。雪の積もった屋根が、家の周りを包み込み、まるで別の世界のように静かな場所へと導いてくれる。暖かい部屋の中にいても、心はどこか外の静けさに引き寄せられた。
子どもが、寝返りを打ちながら目を開ける。ぼんやりとした表情のまま、彼の視線もまた窓の外へと向けられた。家の中がほんのりと明るくなり、雪の結晶が静かに舞い降りる様子を見ていると、どこか不思議な安心感が心を満たすようだ。
母親は家の中の空気を穏やかに整えていくようだった。その背中を見つめていると、時折、小さな揺れのようなものが感じられる。それはこの家の中に流れる、安定した時間のリズムであり、何も特別なことがなくても、その存在自体が大切に思える瞬間だった。
部屋の温もりと外の冷たさが対照的で、そしてどこかでつながっている。父親は静かに立ち上がり、窓の外に手を触れたくなるような気持ちを抱えながら、少しだけ外に出ることを決める。彼の足音が部屋の中で響き、暖炉の火がゆっくりと消えそうになるのを見守りながら、母親は薪を追加する。
家の中に新たな温もりが加わり、また少し静かな時間が流れる。外の雪がさらさらと舞い降り続け、部屋の中で過ごす時間が心地よく感じられる。朝の光の中で、ただ静かに過ぎていく時間。そのすべてが、家族という形で繋がっていることを感じさせる。
夜が静かに明けると、家の中に流れ込むのは柔らかな朝の光だった。雪が降り積もった外の景色は、朝光の明るさに照らされて、一枚の絵のように静かで、清らかだった。家の窓を通して差し込む光は、少し冷たさを感じさせながらも、部屋の中の温もりをすぐに包み込んでいった。
母親は静かに眺めながら立ち上がった。暖炉の火が消えかけていたので、彼女はそっと再び薪をくべると、再び静かな炎が灯った。その光が部屋の中で小さな影を作り出し、静けさの中に温かな活気を与えていた。
静かな音の中、母親は暖炉の前に腰をおろして、家族を見守っているような気配を漂わせていた。家の中はあまりにも静かで、外の雪の音さえも穏やかな余韻のように感じられた。彼女の目は、窓の外を流れる雪の景色に向けられていたが、心の中ではどこか別の場所に思いを馳せているようだった。
子供がソファから静かに起き上がり、毛布を引き寄せて体を温めながら目を覚ました。彼の瞳が、窓の外の雪景色を捉える。彼の目に映ったその光景は、どこか不思議で美しく、心の奥深くにひっかかるようなものがあった。
「雪がすごいね、パパ。」
子供が静かに声をかけた。父親は小さな動きで反応し、少しだけ目をこすりながら眠そうな目を向けた。
「本当だね。」
父親は窓の外に目を向ける。その目には、まだ眠気と温もりが残っていたが、雪景色に包まれたその瞬間に、彼の顔に小さな安らぎが浮かんだ。
「今日は雪遊びに行こうか?」
母親が静かに声をかけた。彼女の声には、ほんのりとした期待感が含まれていた。子供の目がその言葉に反応し、興奮した様子で少しだけ跳ねるように立ち上がった。
「うん!雪だるま作ろうよ!」
子供は無邪気にそう言い、すぐにダイニングテーブルの横にあるクローゼットに向かって駆け出す。彼の興奮した声と足音が、家の中に軽やかな音を立てた。その様子を、父親と母親は少し笑いながら見守った。
「雪だるまね。じゃあ、朝ごはん作らなきゃ。」
母親は笑顔を浮かべる。家族の小さなやり取りを大切に感じていた。その手のひらから溢れる愛情が、静かに部屋の空気を満たしているようだった。
雪はまだ降り続いており、ひとしずくひとしずくが大地に積もっていくのが見えた。
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