第二話

 その後は特にハプニングも無く入学式は終わり、教室で保護者と一緒に先生の話しを聞いて今日は終わりだ。

 教室に戻ると後ろに並ぶ保護者の中に母親を見付けるとその隣りにスタイル抜群の女性と話していた。


 元々は母親の影響で始めたバレー。

 スポ専でここに入りたい気持ちや寮生活も最終的には俺の為になると応援してくれている。


「聖ちゃん、元気そうで良かった。」


 母親が後ろから話しかけてきて、振り返ると満面の笑顔の母親と目が合う。


「母さん、恥ずかしいから。」

「なによー、母さんだけしか来れなかったからいっぱい聖ちゃんを見ておかないと次いつ会うかわからないでしょ?」

「それはそうだけど・・・」



 俺が口籠ると母親の隣りの女性が声を掛けてきた。


「あなたが聖弥君ね。さっきまでお母さんに話しを聞かせてもらっていたの。うちの息子もバレー部だからよろしくね。」

「はい、、、」


 俺は何と答えたら良いか分からずに曖昧な返答になってしまった。


「ごめんなさい、無愛想というかもう16歳になるのに人見知りが抜けないみたい。」

「大丈夫ですよ、うちの息子にわけてあげたいくらい。」


 そう言って親同士笑い合う。



 誰のお母さんなんだろう。しかもバレー部の息子。

 俺は教室を見渡す。雰囲気的に一番可能性が高いのは幸司だ。

 その次に咲月凌だけど、こっちは何というか凛々しい感じで雰囲気がちょっと違う。

 他にもいるのかな? そう思いながら再度見回すともう一人見付けた。

 確か幸司と同中の奴であれはリベロ君? リベロ君も同じ学校か。


 俺はもう幸司はもちろん今教室にいる他のメンバーとも一緒のチームでバレーが出来ると考えただけで顔がにやけてしまう。



「~~です。~~ということで、これから3年間このメンバーと後ろにいらっしゃる保護者の方々も長い付き合いになります。みんな仲良くなー。」



 キーンコーンカーンコーン



「それじゃあ今日はこれで終わりで明日からは普通に学校が始まるからみんな寝坊しないように。」


 みんなが教室から出ていく中で

「ヤダセイー!」


 幸司が俺を呼ぶ声がした。


「ヤダセイー?」

「はーい?」



 俺は幸司に返事をしながら声がした方向を見ると、母親たちと一緒になって話しているのが見える。


「ヤダセイのお母さんって良い人だな!」

「母さん何話したの?」

「何でしょう? 秘密。ねー幸司君。」


 何だろ? 気になる。

 俺の失敗話しなんて山ほどあるし余計なこと言ってないと良いけど・・・

 でも母親と仲良くなってくれたのは嬉しかった。



「矢田君は寮なんでしょう? それならたまには家に遊びに来てね。おばちゃん待ってるから。」

「かあさーん、ヤダセイは俺に会うために家に呼ぶわけだから母さんはダメだよー?」

「あら、良いじゃない? 幸司の新しいお友達と母さんも仲良くなりたいしね。」


 目の前では雑誌の撮影かなにかでモデル二人が話しているかのようだが、そんな二人の会話に俺は若干引きつつも


「ぜぜ、ぜひ今度お邪魔させてもらいます。」

「じゃあ次の部活休みのときか早く終わりそうなときなー! こういうのは早めに決めとかないと!」

「俺も久しぶりに幸司の家に遊びに行っていいか?」

「おう!」

「あっ、ヤダセイ、俺は犬学のリベロだった星乗龍気。」

「はっはじめまして、俺は矢田聖弥。」

「星乗君も鳳星に入ったんだね。」

「星乗君だとなんかよそよそしいから龍か龍気の呼びやすい方で呼んで! 俺もヤダセイって呼んでるし。」



 龍気はまだ幼さが見える感じというか、イケメン集団の犬学の中でも可愛い系だ。

 天パらしく髪はくるくるで少し茶色味があり目もぱっちり二重でくりくりしている。

 まさにトイプードルのイメージ。

 それにニコニコしていて人当りも良い。


 俺は龍気と会話をしていると、隣で幸司と咲月凌が話しをしていた。



「凌も来いよー。ねー母さん3人来ても良いよねー?」

「良いけど幸司の部屋だと狭いからリビングなら大丈夫じゃない? お兄ちゃんたちもいたら龍君久しぶりだし喜ぶわよ。」

「えー、兄ちゃんたちいたら結局狭いじゃん!」



 賑やかな親子だなー。

 俺はふと母さんを見ると、母さんは楽しそうに他の母親たちと話しをしている。


 俺一人で寮に入るとか言って心配かけてるよね? ごめんね。

 でも3年間やっていけそう。

 だから安心してね母さん。


「ヤダセイ、凌も寮らしいぜ。リョウもリョウって駄洒落みてー。」

 そう言って一人で笑っている龍気は楽しそう。



「今さらだよな。俺は咲月凌。よろしく。」

「よ、よろしく。」


 凌は所謂クール系イケメン。切れ長の目にちょっと流された前髪。

 着痩せするタイプなのか、身長から思わせる威圧感というかゴツさは全くない。

 すらっと見える外見はモデルさながらの立ち姿。


「さ、咲月君も一緒なんてなんか凄いね。」

「ははっ。凄いって何だよ? それに凌で良いよ。まさかヤダセイがいるとはなー。」


 凌は見た目からは話し掛け辛い雰囲気を醸し出しているが、実際はフレンドリーで笑うと目が無くなる。


 こっちはハスキー犬みたいだな。

 そんな風に考えていると、


「てかすげーよ! イケメンオールスターに選ばれた中の3人が目の前にいる!」

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