かつて少女であった女房が語る、女主人と過した日々。彼女はまるでかぐや姫のごとく殿方を振り続けていた。女主人の詢子(とうこ)から『紅梅』と名付けられた女房は、「もしや好いた殿方がいるのでは」と気づく。一方詢子の叔父は、自身の出世のため詢子を入内させようと、「兄が居る寺を廃する」と詢子を脅迫し…様々な物語と重ね合わせながら語られる、静かで、色彩豊かな昔話です。
古文の訳文に近い文体ですらすらと入ってくる良作。古典を適度な伏線としつつ、終盤の秀逸な台詞で全てを纏める、短編として美しい構成。可能なら星をもっと足したいと思うくらいにオススメ。