12/22 ちらし寿司




 ふんわりふかふか、砂糖醤油で軽く煮た干し椎茸、蓮根、人参を酢飯の中に入れては、木のしゃもじで優しくやさしく混ぜまして~は木桶の中に入れまして。

 ぱらりぱらぱらはらりはらはら、刻み海苔、錦糸卵、さやえんどう、刻み柚子皮を振りかけまして。

 ちょんちょんちょんと、う~んここは贅沢にむき海老も置きまして。

 ええ~いこれも持って行けと、鶏の柚子山賊焼きを別皿に乗せては添えまして。

 え、何だって、汁物がないじゃないかこりゃあいかん、柚子の皮と彩り麩とわかめのすまし汁はいかがですかってんだい。




 『和干菓子わひがし国』の人間界の和食店にて。


 客席に座っていた野良のらは、柳青りゅうせいに前日に教えてもらったこの和食店の台所でご機嫌でちらし寿司、鶏の柚子山賊焼き、すまし汁を、この店の女将に教わりながら作っているすいを意外に思いながら見つめていた。


「だって、ちらし寿司ですよ。ご機嫌になるってもんですよ~」

「そうなのか。我にはよく分からぬが。これで、クリスマスパーティーに持って行く物が決まったのは、本当によかった」

吟華ぎんか様も絶対に喜びますよ」

「ああ。ところで、柳青は貴様の中で休息を取っているのか?」

「う~ん。どうなんでしょう? 分かりやせんね~」

「分からぬだと?」

「へい。いつの間にか俺の中に居ついちゃったのか~って。柳青が話しかけてきて初めて気づいたもんで。柳青が話しかけなかったら絶対に、俺の中に柳青が居るんだって気付かなかったです」

「貴様は本当に、」


 溜息を吐いた野良が立ち上がって翠の傍へと向かい、柳青が居るのかどうか確認しようとした時だった。

 貸し切りにしているこの店の扉を誰かが控えめに開けたのであった。











(2024.12.22)




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