12/12 ダズンローズデイ




 『和干菓子わひがし国』の地下の鬼界にて。


「ダズンローズデイ。とは、何だ?」

「はい。『洋仁紫ようにし国』では、今日十二月十二日に十二本の薔薇を愛情の印として恋人に贈る日の事を言うそうです」

「貴様は我の恋人であったか?」

「いいええ。滅相もございやせん。けれど、恋人に負けずとも劣らない強い絆を築いていきたいと。ええええ。そう思いやして。この十二本の薔薇は、俺の決意の証として受け取ってくだせえ」


 露天風呂に入って、五色の鬼たちに勧められるままに宿泊施設で、松茸料理に舌鼓を打ち、ふかふかの布団に入って就寝。

 流石は鬼界で第二の守護神と讃えられるだけはある。

 翌日、午前六時に目を覚ましては、五色の鬼たち勧められるままに休息を取ってしまった己の不甲斐なさを反省しつつ、今日こそは流されはしないと決意を新たにしたところで、すいが入出許可を求めてきたので、野良のらが許可すると、いきなり十二本の薔薇の花束を差し出されたのである。


「ふむ。よい心がけ。だが。貴様。何かを企んでいるのではないか?」

「やだなあ。野良様。純然たる俺の気持ちっすよ」

「………そうか。では」


 野良は翠から十二本の薔薇の花束を受け取った。


「真紅か。緑ではないのだな」

「へい。燃え滾る俺の想いを込めたら。あ~らら。不思議。緑の薔薇が真紅の薔薇に変わっちまったんです」

「………そうか。凄いな」

「あ。いえ。あの。冗談ですよ」

「そうか?貴様ならやり遂げそうだが?」

「え~~~。へへへ。褒めてももう何も出やせんぜ」

「照れているのか?可愛いな」

「も~~~。やめてくだせえよ~~~」











(2024.12.12)



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