第5話

「午後の人形劇は15時からになっています」




「チケット二枚頂戴!!」


親子が少年に声をかける。




「ありがとうございます」


青年はチケット代を受け取り、チケットを手渡す。




「いっぱい楽しんでいってね」


青年は小さい女の子にも笑ってチケットを手渡した。




それからもチケットを売り歩く青年ーーーーーーーーー…




「午後の人形劇のチケットは如何ですかーーーーーー…?」




「リク……」


後ろから声をかけられる。




「座長……」




「……まだ……人形を操る気にはならないか?」


座長は優しく尋ねる。




「……………」


リクは考え込むように黙ってしまう。




「ーーーーーーーーーー…僕には人形を操る資格はないです」


リクは納得している様に伝える。




「リク……君はあの火事の事を……もう十分に悔いたハズじゃないか……?」


座長はリクに問いかける。




「……皆はそう言ってくれますーーーーーーーーーー…でも、僕には分かるんです」




「分かる?」




「……あの時、残された人形達の苦しみが………どんな気持ちだったのか」




「リク……」


座長はリクの気持ちを汲み取ってあげる言葉が何も出てこなかった。














「…僕はーーーーーーーーーー…あの子達に触れてはいけないんです」


リクは微笑んで言うが、頬には涙が伝っていた。

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