第35話

幼稚園が終わり、周りの園児達は親が迎えに来る。






「………」


ヒカリは入り口の近くで座り込んで迎えが来るのを待っていた。




「サキちゃん」


「ママ!!」


サキはヒカリの目の前を横切った。



「ママ、きょうはやーい」


「ママ、今から先生と話があるから、サキちゃん待っててね」


「はーいっ」


サキは返事をしながら、ヒカリの方を見てうっすら笑みを浮かべる。




「………」


ヒカリはサキから目線を外すと黙ってうつ向く。




サキはその姿に満足顔。




そのまま後ろ向きに歩いているとーーーーーーーー…




『!!!?』




「キャ……っ」


サキは靴箱の板から足を踏み外して、体勢を崩す。








ーーーーーーーー…ポスッ


「ーーーーーーーー…おっと、危ない」


勇斗が倒れかけたサキの体を持って助けた。




「ーーーーーーーー…大丈夫?」


勇斗はサキの顔を覗き込んだ。




「ーーーーーーーー…気を付けるんだよ」


勇斗はサキの頭を撫でながら言う。




「………」


頭を撫でられるサキは顔を赤らめて黙り込む。




「………」


サキは顔を上げて、勇斗の顔を見上げる。






「ーーーーーーーー…ヒカリ」








『ガーンーーーーーーーー!!!?』


勇斗の口から出た名前にサキの中で何かが音を出して崩れた。






「ーーーーーーーー…ヒカリ、帰ろっか」




「…イサトおにーちゃん」


勇斗の姿に気付いたヒカリは小走りでやって来る。




ーーーーーーーー…ギュッ


ヒカリは勇斗の足に抱きついた。




「ーーーーーーーー…?」


勇斗は首をかしげる。


「ヒカリ、はやくかえりたい」




「ーーーーーーーー…」


勇斗はヒカリの言葉から何かを感じていた。


「ーーーーーーーー…じゃあ、帰ろっか」


勇斗はヒカリの手を握る。






「ヒカリちゃんサヨナラ」


「また明日ね」


「さよーなら…」


先生に挨拶をして二人は園内から出ていった。












「ハァ~勇斗くんってステキよねぇ~彼女とかいるのかしら」


「いやいや、父兄には手を出したらダメでしょ」


先生同士の会話ーーーーーーーー…






「むぅ~」


帰っていくヒカリにサキの中でフツフツと何かが湧いてくる。




「お待たせ、サキちゃん帰りましょ」


「ママ、サキもオニイチャンほしい!!!?」


「な…何言ってるの!!!?」


サキの急な言葉に母親は驚く。

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