第33話

「はーい!!今から自由時間でーす!!」


幼稚園の先生が言うと、園児達は運動場に走って出ていった。






ザッザッザッーーーーーーーー…




「ヒーカーリーちゃーん、いっしょにあーそーぼー」


ヒカリが砂場で遊んでいると、ススムが声を掛けてきた。


「いいよ、ヒカリはコッチから」


「ボクはコッチだね」


ヒカリとススムは二人で仲良く砂場で遊び始めた。




「…あのね、ススムくん」


「なーに?」


「このまえ、ススムくんをたたいてゴメンね」


「ボクはおとこのこだからヘイキだよ」


ヒカリはススムが許してくれた事が嬉しくて自然と笑みが溢れていた。












グシャンーーーーーーーー!!


二人で作っていた砂の山にバケツが落ちてきた。


「「!!!?」」


急な出来事に二人の開いた口が塞がらない。




「あぁ!!おとしちゃった」


二人の前には女の子が一人立っていた。




「………」


ヒカリは驚き過ぎて、その場で固まっている。




「…サ、サキちゃん」


ススムがゆっくり口を開いた。




「サキちゃんもいっしょにあそぶ?」


「サキ、ヒカリちゃんとはあそびたくないの」


サキは意外な言葉を口にした。




「………」

(ーーーーーーーー…えっ)


ヒカリはサキの言った事に首をかしげる。




「…なんで……?」


ヒカリは不安な気持ちでサキに聞いてみた。




「だってーーーーーーーー…ヒカリちゃんってパパもママもいないんだもん」




「………」




「そーゆーこは…サキのママがあそんじゃダメだっていってたもん」


サキの言葉がヒカリの心に重く乗し掛かった。






『スグに逢いたくなって帰って来るよ』


ヒカリの頭に勇斗の言葉がよぎる。


「ヒカリのパパはちゃんといるよ」


「ドコにいるの!!?」




「…………っ」




「ほらね、やっぱりいないじゃんーーーーーーーー…ススムくん、むこうにいこっ」


「えっ、でも……」


「いいからぁ」


サキはススムを強引に連れていった。














…キーンコーン…カーンコーンーーーーーーーー


「みんな!!遊んだ物をちゃんと片付けて教室に戻りましょう!!」


先生が号令をかけると、園児達はちゃんと遊んだ物を片付けて、次から次に教室に戻って行く。





















そんな中ーーーーーーーー…


ヒカリは声を出さずに泣いていた………

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