一歩目

第7話

翌朝


竹之内家の朝は各々が勝手に動く。






「行ってきまーす」


一番最初に汐莉が出勤していく。


「勇斗、これが幼稚園までの地図だから迷っちゃダメだからね」


「ーーーーーーーー…あぁ」


「それじゃ、二人とも行ってらっしゃい」


「いってきます!!」


「ーーーーーーーー…行って……きます……」


母に見送られて、低血圧気味の勇斗と元気一杯のヒカリは家を出ていった。








「ーーーーーーーー…行ってきますと言ったモノのこんな地図じゃ誰も分かんないって」


「ヒカリね、あたらしいよーちえん、たのしみ!!」


勇斗は明るいヒカリのことを見ていて、ふと思った。




「ーーーーーーーー…お前は寂しくないの?」


「ヒカリ、へーきだよ」


勇斗の質問にヒカリは即答した。


「ーーーーーーーー…そっか、それは良い子だね」

(いや、良い子なのか?)


自分で言っておきながら、勇斗は首をかしげる。




「いいこ!?」


ヒカリはスゴい反応した。


「ーーーーーーーー…うん、良い子だよ」


勇斗は眠気がマダ抜けてないみたいだ。






「…あれっ!?兄ちゃんマダいたんだ!?早くしないと遅れるよ!?」


家から出てきた満琉が玄関にいる二人に驚いている。


「ーーーーーーーー…今何時?」


「8時20分」


「ーーーーーーーー…えっ、俺が遅刻じゃん!!この家の人間は本当に俺の事どうでも良いんだな!?」


勇斗は少し苛立ってきている。


「ーーーーーーーー…急ぐよ」


勇斗はヒカリの手を握って走り出した。






「……い……いっ………いいっ……」


「ーーーーーーーー…何?」


「イサトおにーちゃんっ、ヒカリおべんとない」




「ーーーーーーーー…えっ!?」










ピロンピロンーーーーーーーー♪


「ありがとございました」


「ーーーーーーーー…ウチって弁当ないから、コンビニのオニギリで勘弁な」


勇斗は袋を手渡した。


「ヒカリ、オニギリすきだよ」


「ーーーーーーーー…そりゃ良かった………って遅刻だ!!急ぐよ!?」


「キャッ!!」


勇斗はヒカリを抱いて、幼稚園まで走った。











「それでは3時にお迎えに来て下さいね」


何とか時間までに幼稚園にヒカリを送り届けられた。




ーーーーーーーーガシャン…


その場に立つ勇斗………






サァーーーーーーーーー…




「ーーーーーーーー…ハァー」


風の音すら勇斗には虚しく聞こえる。









(ーーーーーーーー…何やってんだろ俺)

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