第17話 装備購入①

 

 

 今日は午前中に四件のクエストをこなした。受注したのは街の外にある農地に出現する害獣駆除のクエストだ。これは私にとって数年間鍛え続けた得意作業となる。

 

 ダルア村にある父の農地とは比べ物にならないほど広かったけれど、その外側をぐるっと一周する頃には、周辺にいた害になる動物を全て捕らえ、血抜きまで済ませることができた。

 

 畑の地下も含めて念入りに探ったところ、地中に潜んでいた動物もいた。しかし地面まで通路がつながっているのなら、魔力の手で容易に引きずり出すことができる。無属性魔法は物体を透過させることも自由自在だから。

 

 これも同じように首を裂き、抜いた血はそのまま農地の外まで飛ばして捨てた。その後は依頼者に成果を確認してもらい、完了書にサインをもらって終わりとなった。

 

 うん、受けたクエストはこれだけだったんだけど、害獣の中にウサギや野ネズミ、シカが含まれていて、そのまま納品するとさらに三つのクエストをクリア扱いにしてくれたんだよね。ウサギと野ネズミはHランク、シカはGランク。

 

 これ、いいんだろうか。若干せこい気がするのだが。まあ冒険者ギルドがいいのなら報酬が増えるだけだから、私としては文句はないのだけれど……。

 

 

◆◆◆

 

 

 さて、これから今日の本題となる装備探しだ。ここ数日クエストで近くを通る際には店により、良さそうな店や相場は確認している。今日調達したい装備は三つだ。

 

 商業区を歩き、まずは防具屋に入る。陳列された商品を横目に店主にあいさつする。

 

「こんにちは」

 

「おや、いらっしゃい。ああ、お前か。今日は買ってくれるんだよな?」

 

「そのつもりで来た。新人冒険者向けで動きやすい防具が欲しい」

 

「それだけ動けるんだから、もう少しいいもの着てもって考えちまうが、お前さんまだ小さいもんな。すぐ買い替えになっちまうか」

 

「ん」

 

「新人冒険者向けとなると動物革になるな。多少安くて気休め程度のソフトレザーか、防御力を気にするなら硬化処理したハードレザーか。……これなんてどうだ。全部で六百リンだ。新人向けとしちゃあ若干高めだが」

 

 上半身を覆う胴鎧は太ももまでカバーし、グローブとグリーブ付きのブーツがセットになっている。このグローブなら後で購入予定の装備とも干渉しなさそう。

 

「試着はできる?」

 

「おうよ。買うなら調整も必要だしな。盾も用意できるが必要か?」

 

「……いや、いらない」

 

 説明を受けながら革鎧を装着する。

 

 たぶん小さいサイズのものを出してくれたんだろうけど、まだ少し大きい感じがする。氣力と魔力を通してみるが、それほど邪魔な感じもしない。

 

 現状の私は体がそこまで強くないし、よけるか魔法で受ける戦闘スタイルなので、盾はやめておく。

 

「これでいい。鎧が少し大きいから調整してほしい」

 

「了解。今は手が空いてるからすぐに取り掛かる。一刻ほど後にまた来てくれ」

 

 そういうことになった。

 

 

◆◆◆

 

 

 次は武器だ。同じ通りのそれほど離れていない場所にある武器屋に入る。

 

「こんにちは、剣を見せてほしい」

 

「どうぞ見て行ってくれ」

 

 これまで会ってきた冒険者を含め、冒険者で前衛をやっている人の武器は剣であることが多い。次に棍棒かメイスだろうか。たぶん携帯性に優れていて、森や洞窟など狭い環境でも使いやすいからだと思う。

 

 だから私も剣を練習していたわけだ。

 

 開けた場所では槍が強く、戦争では近接戦闘の主力となっていると聞いたこともある。ただ、私の身長だと槍は背中に担ぐこともできず、常に手に持っていないといけなくなるからね……。

 

 初心者の剣と言えば、材質は青銅や鉄だ。その他ある程度成熟した人が使う、一般的な冒険者の最終武器となることもある鋼鉄、上位の冒険者が使用するミスリル・アダマンタイト等の憧れの魔法金属が有名だ。

 

 その中で何を選ぶか。

 

 私はたぶんこれからも常人の数倍の速度で急激に強くなると思う。そうなると、あまり弱い武器ではすぐに使えなくなると思うのだ。一応体が大きくなる頃までは使い続ける予定だし、すぐに買い替える前提の防具とは方針を変えて、初心者用の剣を避けて鋼鉄製を選ぶ。

 

 商品棚に並べてある鋼鉄製のショートソードをいくつか持ってみて、エネルギーの通りやすさや重量バランスの良さを確認する。そしてやや小ぶりな七十セトル弱のショートソードを選んだ。

 

 私は身長のわりに足が長い方なので、これくらいなら腰に下げることができそうだ。背中に背負うことも考えたが、やはり剣の一つは手元の操作で引き抜ける場所に置いておきたい。

 

「店主、これが欲しい」

 

「ふむ……使えそうだな。剣帯も込みで二千八百リンだ。お金はあるのかい?」

 

「ん」

 

 幼い見た目からお金を持っていないのではと訝しんだのだろう。その声を聞き流し、金貨二枚と銀貨八枚を取り出して、支払う。

 

 ふぅ、二千八百リン。HランクからGランクになるまでの全てのクエスト報酬を合計しても半分にもならない。いかに分不相応かわかるな。小さめの剣でこの値段なので、普通はもっと高いということだろう。

 

 

 

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