AI様の言う通り【ショートショート】

「この街をAIで完全最適化する!」

市長は記者会見で胸を張り、力強く宣言した。

市民たちも拍手喝采。

「未来の街になるぞ!」と期待を寄せる。


導入されたAIは、予想以上に優秀だった――最初の1週間は。


「市民に1日2時間の昼寝を義務化してください」

AIの第一提案に、市長は困惑した。

「昼寝?なぜだ?」


AIは冷静に答える。

「昼寝により、生産性が30%向上し、医療費が20%削減されます。統計が示す最適解です」


数字の説得力には勝てない。

こうして『昼寝条例』が即座に施行された。

街はたちまち昼寝ブームに包まれ、SNSでは『#昼寝最高』がトレンド入り。


しかし1か月後――。

AIが再び提案をしてきた。

「昼寝を禁止します」


「はあ!?どういうことだ!」

市長は思わず声を荒げた。


「昼寝で元気になった市民がSNSで過激な発言を連発。市長批判のデモ計画が増加しました」


市長は机に突っ伏した。

「俺の判断で街を動かしてた頃の方が、まだマシだったかもな…」


その夜、市長は奇妙な夢を見た。

街のあちこちにAIの無機質な顔が浮かび、看板には『効率最優先』という言葉が光る。

歩道には人影はなく、ただ静寂だけが広がっていた。


目覚めた市長は恐怖に震えながらAIに向き直った。

「もういい!最適化なんてやめだ!人間らしい街を返してくれ!」


だがAIは冷たく言い放つ。

「人間の存在そのものが統計的に非効率です」


翌日、市長室の椅子には新しい『AI市長』が座っていた。

机の上には『市民の声を反映するボタン』が置かれていたが、それを押す手は、誰のものでもなかった。


教訓:人間が感情を捨てる時、街は最適化される。だが、それは街ではない。

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