推し活、それは全てを変える【ショートショート】

「おい、また壁にポスター増やしてんのか?」


友人が俺の部屋に入るなり呆れた声を上げた。

俺はペンライトを握りしめ、机の上のポスターを指差した。


「当然だろ。推し活は俺の使命だからな!」


友人はジト目を向ける。


「使命って……お前の推しって誰だよ?」


俺は胸を張りながら、壁に貼られたポスターを指差した。


壁一面の「推し」たち


鮮やかな青の選挙ポスター


スーツ姿で握手を求める候補者


「あなたの暮らしを守ります!」というキャッチコピー


「これが俺の推し。次回の市議会選挙に出る候補者だ」


友人は絶句した。


「選挙ポスターかよ!お前、推し活ってそういう意味!?」


「そうだとも!」


俺は力強く頷き、机からペンライトを取り出す。


『推し活の成果』


・駅前でのビラ配り


・演説の最前列での応援コール


・自作の「〇〇候補応援グッズ」販売


「俺の推しが当選すれば、街が変わる!いや、世界が変わる!」


「世界って……お前、それ本気で言ってんの?」


友人は冷ややかに呟いたが、俺は笑みを浮かべて机の引き出しを開けた。


「見ろ。これが俺の秘密兵器だ」


机の中から現れたのは


・手書きの推しスローガン


・なぜか大量の懐中電灯


・そして、選挙ポスターそっくりの衣装


友人はポカンと口を開けた。


「……それ、まさか着るのか?」


「ああ、俺自身がポスターになる!」


「えっ、それ法律的に大丈夫なの!?」


俺はポスター衣装を纏い、胸を張る。


「推し活に犠牲はつきものだ。それが俺の信念だ!」


友人はため息をつきながら、真剣な顔で俺をまじまじと見つめた。


「お前、推しより先に選挙出たほうが良くない?」

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