エンタメの公式【ショートショート】

タカシは得意げに言い放った。

「俺、エンタメの公式を編み出したんだ!」


友人たちは怪訝な顔をしながら尋ねた。

「…公式って?」


タカシはホワイトボードを引っ張り出し、力強くマーカーを走らせた。


・孤独なヒーロー

・圧倒的な悪

・感動の逆転劇


「これだよ!これがエンタメの黄金比!」


友人たちは苦笑しながらも、タカシの自作映画を観ることにした。


暗い画面が徐々に明るくなる。

ヒーロー登場――ジャージ姿で、カップ麺を片手に持ちながら歩く。


敵役は、画面端で眠そうに横たわる猫。

緊張感ゼロのBGMが流れる中、ヒーローは突然叫ぶ。


「お前との決着をつける!」


猫が欠伸をしながらヒーローを無視すると、ヒーローはカップ麺を勢いよくすすり、最後にスープを飲み干した。

その瞬間、字幕が画面いっぱいに現れる。


「勝利!」


上映後。


部屋に沈黙が落ちる。

タカシが満面の笑みで尋ねた。

「な?感動しただろ?」


友人の一人が頭を抱えて呟いた。

「いや、こんな感動は初めてだ…別の意味でな。」


だが数日後、その映画が突然話題になった。

「カップ麺を通じて人生を描く深遠な寓話!」

「エンタメ界に新たな公式が生まれた!」


評論家たちが勝手に深読みを始め、タカシは「天才映画監督」として引っ張りだこに。

友人たちは頭を抱えた。


「世の中の方がよっぽどエンタメだよな…」

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